「身体の一部だから、適当にカットできない」ー縁を大切にする“髪のお医者さん”中林奨太が腕に刻む想い

来たる11月11日に開催される、第4回「ART HUMAN FESTA2018」※。今回出店する若手クリエイター=アートヒューマンたちに、日々のモノづくりで考えていることや、フェスタに懸ける“想い”について聞いた。

 

※【ART HUMAN FESTAとは?】

表現する人そのもの=アートと捉え、そのような表現者を「アートヒューマン」と呼ぶ―アートヒューマンプロジェクト―の運営チームが企画するマーケットイベント。くわしくはこちら。

 

インタビュー1人目は、今回が初出店となる、中林奨太さん。熊本市の美容室「tetorigarden」のスタイリストだ。

 

 

INTERVIEW FILE 01 SHOTA NAKABAYASHI

 

 

 

自分が美容師として作りたい場所とフェスタがリンクした

――中林さんは、今回なぜフェスタへの参加を決めたのですか?

 

フェスタが開催される、「山ぼうしの樹」の豊かな自然景観とか、そこに流れる空気感、イベントのテーマである「想いを話せる場所」っていうのが、自分が今後美容師として作っていきたい場に、リンクしていたからです。

 

 

当時の話になりますが、18歳から熊本の美容院で働いていて、そこで現場経験を積みながら国家試験の勉強をしたのですが、国家試験に合格したら上京して東京で働きたいと決めていました。

 

その決意は、当時働いていたお店の店長にも周りの人にも話していました。…上京することを決めた、まさかのそのタイミングで、ずっと付き合ってた交際相手との間に子どもを授かったんです。

 

 

――まさにこれからのタイミング!

 

でもそのときに、生まれてくる子どもに熊本を出るのを止められているような気がしたんですよね。「お父さんは東京じゃないよ」みたいな。笑 それで東京!東京!って言ってたのが一転、地元の熊本で、やり続けよう、頑張ろうと決めました。 そんな中、熊本で1番自分が理想とするお店「tetorigarden」に移りました。

 

――ずっと東京行きを目指されてたのなら、相当思い切った決断でしたよね。

 

お店を替える前は、正直まだどこかで東京で美容師をすることへの憧れが残っていました。最先端のキラキラに憧れてましたね… しかし それが、ある出来事があってから、理想の美容師像や働きたい美容室のイメージが180度変わったんです。

 

 

 

 

――一体なにがあったんですか?

 

僕は、毎回違う美容室で、違う美容師さんに髪を切ってもらってるんですけど、沖縄に旅行したときに行った美容院がすごく良くて。

 

それまで、自分は東京の美容室に行って勉強してるってことにステータスを感じていて、その一貫ですごく価格の高い有名店に行ったこともありました。

 

でも、それまでに行ったどの店よりも、その沖縄の美容室が「一番いい」って思ったんですよね。 元々沖縄で働いていた先輩の美容師さんから教えていただいたお店だったので、技術がしっかりしてるというのはもちろんだったのですが、何より店内に漂う空気の緩さが良くて。 通常同じ県やエリアにある美容院って、結構バチバチした緊張感のある関係になることが多いのですが、沖縄の美容院は「自分たちは島国だから、お互い張り合わないで、沖縄全体で協力して美容室や美容業界を盛り上げていこう」と美容師同士がめちゃくちゃ仲がいいんですよ。

 

みんなで勉強してみんなで業界を盛り上げていこうって。

 

 

熊本から来た旅行客なんて、お店からしたら、もう二度と来ないだろっていうような相手なのに、髪の毛の話からプライベートな話まで、すごい丁寧にちゃんと聞いてくれて。

 

シャンプーの時に、沖縄弁の訛った感じで「力加減は大丈夫ですかぁ~?」って聞かれた時に、「あ~俺が求めてたサービスってこういうことなんだなあ」って思ったんです。

 

 

人がたくさんいて、関わる人数が増える東京に魅力を感じていた自分が、人数は少なくても、ひとつひとつの人との繋がりの深さを大切にする価値観に出合って感動してしまったというか。

 

ずっと身近にあったのに気づけずにいた熊本の魅力に、沖縄で気づかされたんです。

 

だから“そういう良さ”を大事にする美容師でありたいし、そんな美容室で働きたいと考えています。

 

今勤めているお店も完全予約制でお客様との繋がりを大切にする場所なのですが、ART HUMAN FESTAも、そういう場作りを目指す場として共感するものがあったので、参加しました。

 

 

提供するのは自然景観に包まれた中で受けるヘッドマッサージ「伝えたいことは髪を切るときと同じ」

 

――当日は、ヘアカットをされるのでしょうか?

 

当日その場でお会いした方の髪を、急に、その場のノリで短時間で切るということは絶対にしたくないですね。

 

僕にとって髪を切るってすごく特別なことなので。 髪の毛って体の一部なんですよ。生きていない細胞ではあるんですけど、細胞の1つとして絶対に適当には切らない。切れないって気持ちが、ずっとあります。

 

例えば説明もなしに身体を切られたらたまったもんじゃないじゃないですか。そういう感覚で髪に接しています。

 

元々、自分が美容師になりたいと思ったきっかけが、中学生相手に色々親身に教えてくれる美容師さんと出会って「髪切るって深くて、おもしろい!」って思ったのがきっかけなのですが、家族の影響も強く受けていて。自分の家系の女性って、みんな看護師をしていて、そのまわりの環境もあって、ずっと美容師じゃなくて、「髪のお医者さんになりたい」って言ってたみたいなんです。

 

例えば一概にヘアカットと言っても、人によって色んな考え方や理想があると思います。 僕にとっては、その人らしさを生かして、その人が一番元気になれる状態にすることができるのが美容師の技術だと想っているのです。

 

――にじみ出る個性を、ヘアカットでカタチにするアーティストなんですね。

 

長い短い、奇抜、ナチュラルー色々あるけど、髪型って、一番身近なアートだって僕は感じていて。だから、綺麗だとか、自分らしいとか、普通でいいとか、その人にとっての“気分が良い状態”に、自分の技術で持って行ってあげられる美容師でありたいです。 だから今回は、カットをすることはできないけど、心を良い状態にもっていくために自然景観溢れる最高の癒し空間でヘッドマッサージができればと考えています。

 

 

髪の毛を作ってる頭皮を整えて、その人の心や頭皮の状態を健やかにできたら、今度は、その人が周りにいる人たちもハッピーにしようとするーそんな連鎖反応が起これば、自分の1番の根っこにある「仕事を通して人々に提供したいもの」は表現できると思うので。 

 

 

 

「選んでくれた人」とのつながりや縁を大切に、自分のお店をオープンします

 

――今回のフェスタでは、ぜひまた新たな熊本の人々との出会いにより、交流を楽しんだり、繋がりを深めたりしていただきたいと思うのですが、イベントとは別に、今後中林さんとして、進めている計画などありますか。

 

4月に熊本の合志で、「Mori no Ki」という名前の、自分のお店をオープンする予定です。

 

僕としては、地元の「まち興し」っていうと大げさなんですが、そういう役割を果たせる場所になれたらと思っています。

 

美容室だけど、近所の方、お客様が集まるイベントをしたりとか、そういう事ができる場にしていきたいです。

 

そしてあの人はこれが好きだかからこうしようとか、こういう音楽が流れてたら気分が良いだろうなとか、色々考えて、お客さんの健やかさを引き出す、オーダーメイドで、パーソナルな空間づくりができればと考えています。

 

――お話を聞いてると、人を喜ばせたい気持ちというか、ホスピタリティみたいなものが、すごく高いですよね。そこまで頑張るモチベーションは何なんですか?

 

御縁があって、必要とされて、選んでもらえてるということですかね…

 

 

美容師も美容室も、ものすごくたくさん存在する中で、自分を選んで来てくれた人が幸せな気分じゃなかったら嫌じゃないですか。

 

できることを全身全霊でしてあげて、自分に後悔がないようにしたいです。 今回のイベントに限って言うと、なにかしらの縁で山ぼうしの樹に来て、2階まで上がって来てくれた人には、その場で、やっぱり幸せになって欲しいじゃないですか。

 

癒されたと、最高だったと。 自分を選んでくれた人たちとの繋がりを大切に、地元や業界を盛り上げていければなあと。そんな想いが、今回のイベント出店という新しい機会を通して、お客さんや同業者たちに少しでも伝えられたらと思います。

 

――中林さんはART HUMAN FESTA 母屋の2Fでヘッドマッサージを行う予定です。興味が湧いた方は、ぜひ足を運んで体験してください。強い思いや言葉とは、ギャップのある柔らかな雰囲気の中林さんの人柄、施術にきっと最高に癒されるはず。「morinoki」の完成・オープンも含め、今後の新たな動きに目が離せないアートヒューマンです。

 

 

続いてお話を聞くアートヒューマンは菓舗梅園の片岡翔乃助さん。公開をお楽しみに!

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