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乗る⼈のセンスが光る フランスのベロと熊本の⾃転⾞

皆さまいかがお過ごしでしょうか?ちょっとずつ暑くなってきたニースでは⾃転⾞で⾵をきって⾛るのが気持ちい季節になってきました。今回は最近またより⼀層注⽬を浴びている⾃転⾞について書きたいと思います。
⾃転⾞はフランス語で、vélo (ベロ)です。⽇本語のベロ(⾆)とはなんの関係もありません。由来はベロぺシードと⾔って⾃転⾞の祖先にあたる乗り物を省略した名称です。ラテン語で「早⾜」を意味します。

http://www.slate.fr/story/92455/sport-histoire-politique-et-sociale

 

フランスではツールドフランスがあるように⾃転⾞の歴史はとても深いです。(本来ツールドフランスは 6 ⽉末から 7 ⽉頭にかけてありますが、今回は 8 ⽉に延期になりました。)

 

 

 

 

⾃転⾞ブームが更にブーム


https://www.bbc.com/news/world-europe-52483684

⼈混みを避けるためにバスや電⾞の代わりに⾃転⾞に乗る⼈が増えているようで
す。アメリカでは⾃転⾞が売り切れているというニュースも⾒ました。⽇本でも⾃転⾞通勤が増え、賠償責任保険の加⼊が増加したというニュースを⾒ました。世界中で⾃転⾞が今よりいっそう注⽬を浴びています。南仏は⾬が少ないので⾃転⾞利⽤に適しています。

 

 

 

街のベロブルー

 

Vélo Bleu(⻘い⾃転⾞)と⾔い、ニースには街中のいたるところに無料レンタル⾃転⾞が置いてあります。携帯電話で簡単に登録でき、1時間半以内の使⽤は無料です。終電を⾒逃した時や、急⽤が⼊った時の移動、または海岸沿いのサイクリングに地元の⼈にも、観光の⼈にも便利です。最近、これに電動型の⾃転⾞も導⼊されました。私は友⼈を空港に迎えに⾏かないと⾏けない⽇に市電がストライキで動けなくなった時にすごく助かりました。ただ、⼀つ⽋点は⾞体がとても重く操作がしにくいことです。⾃転⾞としての最低限の機能は果たすけど、盗⼈の⼼を掻き⽴てるほどの魅⼒はないところが盗難防⽌に良いのかもしれません。

 


https://www.viator.com/en-PH/tours/Nice/E-SCOOTER-RENTAL-1H/d478-63919P1

 

ニースは海岸から北に向かって傾斜になっているので、北に⾏くほど⾃転⾞が少ないです。その代わり、電動⾃転⾞や電動式キックボード、バイク、またはセグウェイをよく⾒かけます。
無料レンタル⾃転⾞の他にもレンタルスクーターもあります。しかも電動です。


携帯アプリで3クリックで使⽤できます。無料とはいかないのですが、毎分30円です。ニースは⼩さな街なので数分で⼤概のところに⾏けるので妥当かなと思います。
このように乗り物がどんどん多様化していますが、⼿頃で運動のツールとしても⾃転⾞がやはり⼀番⼈気です。

 

 

 

いつの間にか⾃転⾞道路ができていた

 

ニースには⾃転⾞レーンが所々にあり、全部合わせて75km です。しかし路⾯表⽰が薄れていたりして分かりにくく、75km もあるようには⾒えないのが現実です。
今回、外出禁⽌解除から外に出てみるとびっくり、ニースの海岸から北に向かって2本の主要道路がありますが、そのうちの路⾯電⾞が⾛っていない⽅の⼀本に新しい⾃転⾞専⽤道路ができていました。


これは海岸から坂になるまでの約 4km あります。

ど真ん中⾃転⾞道路に賛否両論

 

 

によっては⾃転⾞は原則⾞道でしか⾛ってはいけないところもありますが、フランスは⽇本と同じで⾃転⾞は歩道と⾞道の端を状況に合わせて⾛っています。歩道だと歩いている⼈をさけるのが⼤変だったり、⾞道の端だと⾞とすれすれでビクビクしたりと⼤変です。この⾃転⾞専⽤道路を利⽤するようになった友⼈は障害物が少なくスムーズに⾏けて便利だと⾔います。⼀⽅、別の友⼈は⾞の右⾞線と左⾞線に挟まれていて、時々⾞が⾃転⾞道に⼊ってきてとても危ないと⾔っています。通⾏量が⼀番多いところでは下の写真のように⾞が⼊って来ないようにポールが⽴ててある部分もありますが、ほんの⼀部です。

また、モーターサイクルで通勤する友⼈はこの⾃転⾞道路に伴う通⾏規制で家路がすごく遠回りになったそうです。まだまだシステムの改良が必要なようです。


電動⾃転⾞でデリバリーサービスをしている⼈。

 

近年 Uber Eats などのデリバリーサービスの⾃転⾞利⽤も増えました。ある友⼈は毎⽇2時間程度の⾃転⾞配達だけで⽣活収⼊を得ています。今からもっと⾃転⾞に友好的な環境が求められているのを感じます。

 

 

 

 

私の、俺の、おさがり⾃転⾞

 

ここからはみんなが実際に乗っている⾃転⾞をいくつかご紹介します。


これは前回の記事「お久しぶり。」ニースの⼈々の⽣活をたずねる(後編)に登場したアガタの⾃転⾞です。コミュニティーサイトで⾒つけた中古⾃転⾞で約6千円で購⼊しました。

 

ポイント1. トップチューブが⼥性⽤に斜めについていて、降りるときに⾜を前から降ろせること。
ポイント2. ハンドルバーの形が変わっていること。この形は⼿を置いたときに背中にかかる負担が少ない。
ポイント3. ⻘いハンドルテープ。ドイツにアーティストレジデンシーに⾏ってた時に⾒つけて購⼊したもので、いい思い出。

 

これはアガタのパートナーのアーノの⾃転⾞。 ViaVélo という⾃転⾞の修理や管理をするコミュニティー団体から中古のパーツを組み合わせて約1万7千円で購⼊したもの。

 

ポイント1. フレームが⾼く、アーノの⻑い⾜に適している。
ポイント2. ギアが効率的、かつ⾃動的に変更可能。
ポイント3. 細いタイヤで地⾯との接触が少なくすごく早く⾛れる。

 


これは友達のバロンタンの⾃転⾞。

 

ポイント1. フレームが鋼製でとても丈夫。
ポイント2.レトロなクランクだけどパワーはモダン級。
ポイント3. タイヤはなんと70−80年代のものだけど質が良く耐久性に優れている。

 


こちらは更に⾃転⾞オタク度100%を超えるブリースの⾃転⾞です。外出禁⽌令中ネットで探しに探して⾒つけた中古の2005年モデルの Cannondale という⾃転⾞。しかし、購⼊時、所有者はマルセイユに住んでいて、コロナ禍移動規制の100km 圏内を超えていました。そこでマルセイユの病院に診療予約をして移動許可書をもらい、キャンセルするというちょい悪⼯作までしてやっと⼿に⼊れました。

 


ブリースは半分アメリカ⼈です。この⾃転⾞はアメリカデザイン、アメリカ製、の誇りの⾼品質品です。オレンジのグラデーションが⼀番のお気に⼊りポイントで、インコ(パラキート)のようなので、キートと名付けているそうです。グラデーションが⼤好きなブリース。現在制作中の透明ビニールシートに描いている絵もパラキートで、シートの裏側から⾊のグラデーションを⾜すそうです。サササッと⾝軽に⾶ぶイメージが良いインスピレーションになっているそうです。

 


ニースの新しい規定で、⾃転⾞修理にかかる費⽤は5千円以内まで市が負担することになりました。これを⼀部利⽤して、ハンドルブレーキなど所々改良する予定です。

 


なんとペダルにカチッとはまる専⽤靴まで揃えています。
⽇本にいた時の私の⾃転⾞へのイメージはお店にあるものを新しく買って、不備が出てきたらちょっと修理するぐらいの感じでした。フランスでは、中古の⾃転⾞も⾃分の好みや体に合わせてパーツを変えたりして、それぞれに特徴や⽣い⽴ちがあって⾯⽩いなと思います。

 

ここからは熊本の⾃転⾞の情報です。

 

 

 

熊本の⼤野さんの⾃転⾞

こちらは熊本に住む⼤野さんです。精神科の病院でケースワーカー(PSW)の仕事をしています。最近、娘のあんちゃんとサイクリングをする専⽤の⾃転⾞を⼿に⼊れたということで⾯⽩そうだなと思ったのでインタビューしてみました。

 


ハーレー号と名付けられていて、スピードはあまりでないそうです。お⼦さんを乗せての⾛⾏にはぴったりですね。送り迎え、ドライブも兼ねたお買い物使⽤で、重量があり筋トレになるそうです。こんなに可愛い⼦が後ろに乗っていたらキツくても頑張ってこげそうです。

 

 


これは通勤⽤の⾃転⾞。クロモリと⾔う鉄製で、乗り⼼地がよく丈夫で、普段乗
り、街乗りに適しているそうです。⻘と紫のグラデーションと細めのフレームで
ザ・⼤⼈なかっこよさです。

 


これはツーリング⽤の⾃転⾞。アルミとチタンの合⾦フレームにカーボンホイールを履かせて軽量な仕上がり。他と被らない紫⾊のカラー。トップチューブとフロントフォーク裏側にバラクーダ(オニカマス)の絵柄が⼊っていて、速さや獰猛さを感じさせるデザインがポイントです。

 

⾊々な⽤途に合わせた⾃転⾞があって、こんなに違いがあるんですねえ。これだけあると⾃動⾞より⾃転⾞を使う機会が増えそうだなと思いました。

 

 

 

カントリーロード コンクリートドーロ

 

最後に、熊本の⾃転⾞環境について⼤野さんに意⾒を聞いてみました。
「熊本にも市内に極々一部、自転車専用レーンがありますが、多分 1 キロくらいも無いかもしれないのでもっともっと拡充してほしいです。後は、サイクリストが集まる場所も道路、アスファルトが荒れていたりするので整備してもらえれば、もっと快適に走れるようになると思います。」
どこの街でもこれからもっと試行錯誤をしながら地球や人間の健康にやさしい自転車環境が整うといいなと思います。

 

 

 

 

Writer

マキコ 1988年熊本県生まれ。白川中学校を卒業後カナダへ。公立高校卒業、芸術大学卒業、キッズアートスクールで働き、バンクーバーの雨にうんざりしたのとカナダ滞在10年を区切りに帰熊。文房具屋、発達しょうがい児支援所、味噌・醤油・酢屋、熊大の非常勤講師、クラフトビールバー、個人的に英会話を教えるなどして、色々な職業を経験。今度はヨーロッパへの好奇心が押さえられなくなり、フランスで最も太陽が照る街ニースへ。ビラ・アーソン芸術大学院に就学中。

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