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ARTICLEアーティストのリアルを届ける特集記事

隔離中の春と⾃然がくれる想像の世界

皆さま、いかがお過ごしでしょうか。フランスはコロナウイルス対策のため隔離⽣活がまだしばらく続きそうです。私は⾃分が通っている芸術⼤学の敷地内に住んでいます。ありがたいことに広い庭があるので割と⾃由に⽇光を浴びたり、散歩をすることができます。⾏動が限られた分、逆に今はごく⾝近なことや⾵景に⽬を向けることができる貴重な時間じゃないかと思います。そこで今回はその庭に植わっている草花や⽊について書きたいと思います。それから、それらの植物を使って制作をしているドイツ⼈学⽣についてお話させていただきます。

 

 

 

 

 

コンクリート建築と緑と怪奇現象

私の通うニースの学校はビラ・アーソンという国⽴芸術⾼等学校、兼美術館です。元々はアーソンという貴族の豪邸でした。芸術⼤学として使われるようになったのは1881年。1960年代にミシェル・マロというフランスでも有名な建築家によってコンクリートと⽯壁のモダンな建物に改築されました。芸術⼤学になる前は⼥性専⽤の精神病院だったそうです。その頃から在中しているお化けがいるという噂で、時たま怪奇現象が起こります。

庭を含めた敷地の広さは23,000平⽅メートル。
ガチッとしたコンクリートの建物と⽣き⽣きとした緑が良いコントラストを作っています。

⼀⾒かっこよく⾒えるのですが、実はコンクリート建築がゆえに⽋陥も所々あります。テラス上にも植物があり、⾬が降ったり⽔やりをすると建物の中の⽅では⾬漏りしています。⾬の⽇が続くと⽔掃けが悪いため壁がカビやすいです。これは怪奇現象とは関係ありません。

 

 

 

 

 

花と⿐で季節を感じる

今は隔離対策中で庭師も働くことができませんが、普段は常に5名ほどの庭師がいて植物の⼿⼊れをしています。おかげで年中たくさんの種類の花が咲いています。⼈間は隔離中でも春は確実にやって来ています。寮の建物を出るとジャスミンの花が満開でとても良い⾹りがします。私の部屋の窓からは真っ⻩⾊のミモザが⾒えます。⼀⾒綺麗なのですが、花粉症の私には敵です。⾵邪にゆらゆらと踊っている姿はまるで私をおちょくっているようにしか⾒えません。

他にも⽇本では⾒られないような花がたくさん咲いています。

 

 

 

 

 

おいしい庭


花や⽊の他にもたくさんの種類の果実も年中通して何かしらなっています。
上はバナナの⽊です。


1ヶ⽉ほど前まではオレンジやみかんがたわわになっていました。今はキンカンがちょこっとなっています。


このオリーブの⽊の樹齢は最低でも200歳はあるんじゃないかと⾔われていま
す。秋になるとたくさんのオリーブがなります。葉の裏は⽩っぽくなっていて、⾵が吹くと表⾯が太陽の光を反射してキラキラしているように⾒えます。

 

ハーブの種類も豊富で、特に役に⽴っているのがローズマリーです。このように花壇からはみ出すぐらい元気よく⽣えています。パスタやスープを作るときはさっと外に出て新鮮なローズマリーを取ってきて使います。花も緑の部分と同じ味と⾹りがするので飾りとしても重宝されてます。

 

 

 

 

 

 

危険なぐらい⼒強い

 

図書館からはサボテンづくしの中庭が⾒えます。横⽬で⾒るとサボテンが⼈に⾒えるぐらい⼤きく育っています。ここまで果⾁植物が⼤きく育つのは⼀年中気候が安定している地中海気候ならではです。

ここは寮の横の道です。ものすごい勢いで⽣えているので、不注意にフラフラと歩いているとトゲが刺さる可能性があるので危ないです。


⾞が横を通ることもあるので、それでダメージを受けた葉はこのような傷ができて中の繊維まで⾒ることができます。よく⾒ると模様や質感が⾯⽩いです。

 

 

 

 

 

環境とコラボレーション

 

このような草⽊花に囲まれて勉強できる私たちはとても恵まれていると思います。「⾵景や環境は知らず知らずのうちに私たちにすごい影響を与えているから⼤切だと思う。」と同じ⼤学に通う3年⽣のゾスカ・バスチャン。彼⼥は去年の秋にドイツのヘッセン州の芸術・デザイン⼤学から編⼊してきました。


前に通っていたその⼤学も打放しコンクリート建築ですごくガチッとしたイメージでした。ビラ・アーソンの建物とスタイルは似ているけどこちらは植物に囲まれていて、建物と植物のバランスがとても魅⼒的だと⾔います。「現代の社会でも「⾃然と⼈⼯物」、「男性と⼥性」など、今まで対⽐されていたことがだんだん交わってきているのを感じる。」今まで当たり前とされてきたことに対して改めて疑問を沸かせたり考えさせるような作品を作りたいと常に思っているそうです。


この写真の左側が彼⼥が実際に作った作品で、ヤシの⽊の脱⽪した部分を使っています。写真の右側が制作のインスピレーションになったモーターサイクルのパーツの写真です。


植物が⾃然に作り出す⽣存維持のための構造が⾯⽩いと思ったそうで、その⽊の⽪で遊んでいるうちにモーターサイクルの機械をカバーするパーツがパッと頭に浮かんだそうです。墨で⿊に着⾊した理由は、モータサイクルのパーツの⾒かけにより⼀層近づける以外にも、そのままの茶⾊よりも形がはっきりと強調されるから。ヤシの葉の葉柄の部分をシンプルに切り取り、⿊に着⾊することでぱっと⾒は確かに⼈⼯的に作られたものに⾒えます。彼⼥の作品を⾒るまでヤシの葉柄にトゲがあることには気づきませんでした。トゲは⼀⾒凶器ですが、それは⾃⼰防衛の形であって、⼈間が作る道具や物にもよくある形です。


「私は素材を⾃分のアイデア通りに完全に変形させるのではなく、⾃分の⼿をどこまで加えるかバランスを取ることをいつも⼤事にしてる。素材とコラボレーションしてるみたいな感覚。」とゾスカ。コラボレーションをするということは相⼿を観察し、知ることが⼤切です。⾃然に枯れたヤシのパーツとゾスカという⼈間、最初の⽅に⾔っていた対⽐の融合が作品を作る過程にもよく現れています。

 

 

 

 

 

⼈間の根源的な部分

 

私は、彼⼥のこの植物シリーズ以外の作品もいくつか⾒たことがあり、どことなくちょっとエロい雰囲気を感じるのでどうしてか聞いてみました。そうすると、「⾃分では別にそれを意識して作っている訳ではないけど他の⼈からもよく⾔われる。私は素材や物に対してフェチシズム(崇めるほど好きなこと)があって、エロティシズムもそれに繋がるところがあると思う。この⼈間の根源的な性質はアートの世界以外の⼀般の⼈たちにも通じる部分で、興味や⽬を引くと思うから、作品の⼀部の要素としてエロく⾒えるのはそれはそれで良いのかもしれない。」なるほどと思いました。


ここに載せた作品ははまだ完成までの途中の段階でこれからもっと⾊々試して形を極めていきたいそうです。しかし彼⼥は現在、彼⼥の⺟親が住むオーストリアの⽥舎で隔離⽣活を送っているためヤシのパーツを使った制作は⼀旦中断中。今回のインタビューはビデオチャットでしたのでした。今は3D レンダリングと⾔ってパソコン上で⽴体図を描くことに挑戦しているそうです。「アーティストも環境や変化に柔軟に対応しないとね!逆にそれが新しい発想に繋がるかもしれないから。」と⼒強い答え。

 

インスタグラム上の“ギャラリー”curatethequarantine
https://www.instagram.com/curatethequarantine/ というアカウントで彼⼥の過去の作品も現在展⽰中です。

そしてこちらがゾスカのインスタグラム suska_of
https://www.instagram.com/suska_of/ です。ゾスカワールドが⾊濃く出てま
す。

 

 

 

 

 

季節が変わるように

 

今回のパンデミックや災害などにより急に⾏動範囲が狭まったり⼈が⾏き来できなくなる可能性はこの先も⼤いにあるでしょう。それに対応する動きは上記のオンラインギャラリーやオンラインショッピングのように特にインターネットを中⼼にだいぶ前から始まっていますが、それ以前に「今まで通り」ではもう済まない環境に地球がなっていることは明らかです。もっと根本的な部分で、私たちの⽣活を⾒つめ直す必要があると思います。季節の変化も感じられないぐらい忙しく追われる⼈々、クリックすればいつでも⼿に⼊る品物の数々。これが本当に幸せに繋がっているのだろうか。こんなことを隔離⽣活の中ボヤボヤと考えつつ、少しづつでも変化していける良い機会だと思っています。

 

 

資料参考:ビラ・アーソン

 

 

 

Writer

マキコ 1988年熊本県生まれ。白川中学校を卒業後カナダへ。公立高校卒業、芸術大学卒業、キッズアートスクールで働き、バンクーバーの雨にうんざりしたのとカナダ滞在10年を区切りに帰熊。文房具屋、発達しょうがい児支援所、味噌・醤油・酢屋、熊大の非常勤講師、クラフトビールバー、個人的に英会話を教えるなどして、色々な職業を経験。今度はヨーロッパへの好奇心が押さえられなくなり、フランスで最も太陽が照る街ニースへ。ビラ・アーソン芸術大学院に就学中。

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