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Event Report Vol.2 【宝島染工展】 | その染めは、“人”がいるから生まれる。

藍の色は、なぜ人々に好まれるのでしょう。

「ニッチな世界ではある。でもかなり多くのファンがいるんです。」

「宝島染工」の大籠千春さんはこうおっしゃっていました。

 

 

天然染料を使い、一枚一枚手染めで衣服を染色している福岡県三潴郡大木町の染工所「宝島染工」。今回訪れたのは、その製品を並べた企画展「染と量」。

 

 

会場は、福岡県八女市にある「うなぎの寝床」の別邸「旧寺崎邸」です。「うなぎの寝床」は、「九州ちくごのものづくりを伝える」という命題のもと、筑後地域を中心とした伝統的工芸品から、若手作家の作品やメーカー品まで取り扱うアンテナショップ。

 

 

 

「うなぎの寝床」の看板

 

本店から、200mくらい離れたところに、「旧寺崎邸」があります。

 

 

 

“染め”を見て、聞いて、匂って、触れる

 

 

「宝島染工」のWEBサイトをみると、そのコンセプトや思いは、シンプルに語られています。

説明といえば染料の説明、染工所の紹介は、そこで営まれる染めの作業を、たんたんと、でも丁寧につくられた映像です。

 

http://www.takarajimasenkou.com/home_jp.html

 

 

 

カタログも言葉少なに作られているけど、ただ写真を見るだけで、その衣服を人が身につけるとどんなに生き生きと美しいものなのかが伝わってきます。

 

 

 

そんな「宝島染工」の今回の展示は、言葉に溢れていました。

 

 

 

 

言葉に溢れているというのか、染料とは何なのか、藍の歴史はどうなのか、「宝島染工」はどうなっているのかを、言葉だけでなく、絵で、図解して説明してあるのに加え、染料を見て、藍を匂って、映像で見て・聞いて、そして衣服に触れることができます。

 

 

そして展示の中には、“人”の存在が見えてきます。

 

ブラックボードにチョークで手書きした解説、絵も図解も、人の手で描かれた跡が見えます。古民家という有機的な空間の中で、やはり“人”の存在を感じる有機的な展示。それが面白い。

 

 

 

空間に「宝島染工」の世界が広がる

 

 

廊下を隔てて、反対側は製品の展示スペース。

 

 

 

衣服だけじゃない、空間づくりがそこにありました。

藍や泥、草木で染めた縄を編んで、照明を包むランプシェード。

製品を染めた後に工場で洗うとき使っているという袋を、そのままバッグにした製品。

 

ただ、見ていて面白いし、心惹かれます。

 

 

 

 

 

「宝島染工」の特徴である「染と量」。

天然染料で伝統的な染めの技法を用いながらも、大量生産を行い、「今の市場に合う形で提案」されています。染の世界は、他の伝統工芸の世界と同じく後継者不足が進んでいて、それなのに求人も少ないそうです。

 

 

「ニッチな世界ではある。でもかなり多くのファンがいるんです。」

 

そう話す大籠さん。そして、「ファンがたくさんいて、後継者も不足しているのに求人がない」ことを、どうにかできるよう試行錯誤を続けてきたのだそうです。だから、「今の市場に合う形で提案」に、ある意味こだわっていらっしゃるのかな。

 

 

そして、つくられた染めは本当に美しい。

 

 

 

 

 

「宝島染工」の手ぬぐい。藍の冴える色、こんなに細かな模様。

近くで見るとお花のようでもあり、氷の結晶のようでもある。

 

 

その色に、すっと魅了されてしまいます。

 

 

「無駄なことをたくさんするんです。無駄がないと次につながらない。サンプルだけでいっぱいになってしまうこともあります。」と、大籠さん。

 

美しい色とともに、染め方にも色々なものがありました。

 

色斑を生かした染め物もあれば、斑がなく、真っ青な染め物もあったりします。

細かな模様もあれば、幾何学模様もあり。

 

数々の試作から生まれた製品が、この空間にはあるのだと感じます。

 

 

 

フィッティングも染められた布を用いてセットされています。

 

 

 

「作り手」に近く、「使い手」に近いからわかることがある

 

 

展示をみていると、

 

「この黒の染め、綺麗でしょ?光に透かしてみると、真っ黒ではない。泥と藍を合わせて染めたものなんですよ。」

「宝島染工では、“本藍”ではなく“インド藍”を使っていて、そのことで大量生産が実現したんです。」

「これ、工場で染めた布を洗うために場で染め物を洗う時に使っていた袋で作ったバッグです…ご自宅で藍染製品を入れて洗うといいかも、ですか?確かに、そんな使い方もいいかもなぁ」

 

 

こうやって、“染め”への愛情深く、話をしてくれる方がいました。

 

 

 

 

「宝島染工」の方かな?と思いきや、その方は会場「うなぎの寝床」スタッフさん。

「うなぎの寝床」がなぜ東京や福岡などの大都市圏ではなく、地方でアンテナショップをされているのか、それは「作り手に近い」からなのだそうです。

 

九州ちくごにありながら、九州ちくごで作られたものを紹介する「うなぎの寝床」は、作り手との対話を深めることができるから、その“もの”だけでなく、 “もの”の背景を語ることができるんですね。

 

 

 

 

 

宝島染工のFacebookでは、今回の展示にあたってこんなことが書かれています。

 

「うなぎの寝床のスタッフの皆さんは、そんな「作り手」の物語や背景、個性を深く掘り下げて面白さを見出し、独自の視点で編集する素晴らしい「伝え手」として表現してくれました。染め(色)のこと、テキスタイルのこと、生地や服のこと、手仕事や伝統工芸のこと、それを仕事、美辞ネルとして取り組むということ。何かひっかかるものがある方、ぜひ旧寺崎邸に遊びに来てくださいね。」

 

 

作り手とのこういう信頼関係が、このあたたかい空間を生み出しているようです。展示期間は7月21日(日)までですが、「宝島染工」の衣服などは、「うなぎの寝床」で常時扱っているそうです。

 

ぜひ遊びに行ってみてください。

 

企画展WEBページ:http://unagino-nedoko.net/tag/%E6%9F%93%E3%81%A8%E9%87%8F/

イベント概要:https://art-human.com/unagino-nedoko-event-2019/

 

text:yururi to furari

 

 

 

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