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ARTICLEアーティストのリアルを届ける特集記事

免疫上げます熊本の⾚!南仏はテラコッタの⾚!

皆様、コロナウィルスの影響で⼤変なことだと思います。こちらフランスでも数⽇前に公共の施設は全てしばらく閉鎖されることになりました。世界中なんだか不穏なムードですので、今回はちょっとでも免疫が上がるようなイメージをお届けしたいので活⼒を感じる⾊「⾚」をテーマに書かせて頂きます。

 

⽕の国、⾚⽜、トマト、スイカなど熊本の⾊と⾔えば「⾚」と、ここ何年かで熊本のブランドカラーとして確⽴してきているのが伺えます。ニースの場合、特産のオリーブは⿊だし、地中海は⻘だし、、特徴的な⾚の物はないかなとぼやぼや歩いていましたら、なんと街の建物、外観、そこらじゅう⾚⾊が使われていることに改めて気づきました。

 

 

 

衛星写真から⾒てもまっ⾚な街


まずニースに来て印象的なのが街の中⼼にあるマセナ広場というピンクや⾚の建物に囲まれた⼀⾓です。この⼀⾓は 184年頃にニース出⾝の建築家によってトリノスタイルのデザインで構成されました。その影響でそれらの建物との調和をとるため、のちにグレーだった表向きの建物もこのような⾊に塗り替えられました。

マセナ広場の建物以外の他の建物の壁も⻩⾊やオレンジ、ピンク、⾚など暖⾊がよく使われています。私の通う⼤学の建物の⼀部も⾚です。

暖⾊の壁に加え更に街を⾚く染めるのが屋根です。ニースだけに限ったことではありませんがヨーロッパでは多く⾒られるのがテラコッタの⽡です。このようにグーグルマップの衛星写真で⾒ても街中テラコッタ⾊です。

 

 

 

 

テラコッタづくし


イタリア語のテラコッタはテラ=⼟、コッタ=焼いたという意味で正にその⼟地で多く取れる⾚⼟粘⼟を焼いたものです。ほとんどの⽇本の陶器は千何百度で焼かれるのに対し、テラコッタは素焼きで500〜600度程度で簡単にすぐ焼けるので⽣産効率が良いのです。


昔ながらの⽡はこのようにアーチ型で、職⼈が⾃らの膝の形を利⽤して形成していたそうです。


建築に使われるテラコッタは⽡、レンガ、フェンス材、床タイルなど様々です。

植⽊鉢ももちろんテラコッタ。土に含まれる余分な水を排出するので、土は適度な湿度が保たれるほか、余分な熱も放出され、安定した環境を植物にもたらしてくれます。排水性と通気性がよいので、乾燥を好むようなハーブ類またはオリーブや観葉植物など地中海原産の植物に適します。*1
⽇本ではプラスチック製のテラコッタ⾊の鉢がよく売ってありますが、こちらではほとんど本物のテラコッタ鉢しか出回っていません。


暖⾊壁、屋根の⾊、植⽊鉢、すべて統⼀調和されています。このように暖⾊の中にサボテンや果⾁植物の⽣き⽣きした緑が映えるのです。


マティスの絵にもニースの⾚と緑のコントラストが表現されています。現在はマティス美術館として利⽤されている建物は実際に彼が晩年を過ごした場所です。⾒事に真っ⾚です。

 

 

 

漁師の街カーニュ・シュル・メールとテラコッタの⼥神

 

こちらはニースから列⾞で⻄に約15分⾏ったところにあるカーニュ・シュル・メールと⾔う街です。この丘状の旧市街には昔ながらの建築が今でも残っています。

どこもテラコッタだらけ。なんと植⽊鉢が階段や壁と同体化されています。⽊⼾や⾚レンガとも⾊がマッチします。

 

この街の⼩さなギャラリーで現在、私の通う芸術⼤学のグループ展が⾏われています。そしてその中の⼀つにテラコッタを使った作品があります。


彼は南アメリカのフランス領ギアナ出⾝、ダミアン・ルベと⾔い、これまでにグラフィックデザインを主に作ってきました。カーニュ・シュル・メールは漁師の街ということで、アフリカ伝承のイマンジャという海の⼥神を描いています。海は⺟と例えると⿂はその⼦供たちを意味し、それらを守るイマンジャは特に妊婦の守護神として崇められています。⽣命の繁栄を願うモチーフなのです。そし
て、ダミアンの最近の制作は⾃然の素材を使うことを⼼がけているので、今回はこの町でも多く⾒られるテラコッタを使うことにしたそうです。テラコッタ粘⼟を⽔に解いて絵の具として使っています。床のタイルもテラコッタなので空間との調和が取れています。

 

 

 

 

そこにしかないその⼟地の⾊

 

その⼟地の素材を使うことは、その⼟地の⽣態系に適し、またそれが⾊として表れ、景観の調和、⾃然な⼀体感が⽣まれ正にすべての理にかなっていると思います。熊本もお城や⽯畳を切り取って⾒るととても⾵情があって良いなと思いますがちょっと横に⽬をやると80年代に建てられたような安っぽい建物なんかがあったりして街全体が構成感のないパッチワークみたいだなと時々思います。逆に
その⾊々なスタイルが混ざり合った雰囲気を外国の⽅は⾯⽩いと思うみたいですが。これも⼀つのスタイルなのでしょうか。

私は⾊々な国を旅してみてやはりその⼟地でしかない物や景⾊を⾒たときに来た甲斐があったなと思います。現在はヨーロッパのそれぞれの街の中⼼街もザラや H&M、スターバックスなど世界のありきたりなお店ばかりです。建物の外観はそのままでも中はそんなお店で埋め尽くされているのを⾒るとがっかりします。どこに⾏っても似たり寄ったりな場所に結局なってしまているのです。

 

 

ちょっと話が⾶びますが、今世界中に拡散しているコロナウィルスも⼈や物の流通が発展した現代の象徴的な現象だと思います。流通は⽂化の活性化など良い部分もたくさんありますが、何を優先させるのか、何を他所から取り得るのか、その⼟地に元々あるものや⾃然との調和を考えることが⼤切だなと思います。熊本でも熊本でしか⾒られない景⾊や⽂化がこれからも活⼒のある「⾚」のように⽣き⽣きと発展していって欲しいなと願っています。

 

 

 

P.S. サッカーのクラブカラーも⾚!


ご覧の通り、さすがどちらも⾚押しの県、クラブカラーも勿論⾚なんですね。熊本はやっぱり⾺、ニースは県シンボルの鷹です。今はデザインが変わってしまいましたが、ロアッソの 2018 年度版のユニフォームなんかニースのとそっくりです。⾚はどちらのチームにも情熱と戦闘⼒を与えているに違いありません。

 

参考資料:*1テラコッタ鉢とは?使い方や素焼き鉢との違い、特徴は?

記事 https://horti.jp/23961

 

 

 

Writer

マキコ 1988年熊本県生まれ。白川中学校を卒業後カナダへ。公立高校卒業、芸術大学卒業、キッズアートスクールで働き、バンクーバーの雨にうんざりしたのとカナダ滞在10年を区切りに帰熊。文房具屋、発達しょうがい児支援所、味噌・醤油・酢屋、熊大の非常勤講師、クラフトビールバー、個人的に英会話を教えるなどして、色々な職業を経験。今度はヨーロッパへの好奇心が押さえられなくなり、フランスで最も太陽が照る街ニースへ。ビラ・アーソン芸術大学院に就学中。

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