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「お久しぶり。」ニースの⼈々の⽣活をたずねる(前編)

おはようございます。フランスは 5 ⽉ 11 ⽇にコロナ規制緩和が始まりました。もちろん地域によってそのルールは違って、毎⽇のように改定されています。今のところニースでは⾃宅から100km 圏内は許可書なしに移動でき、⼈が密集しない商業施設は再開、常に1m 以上離れていれない公共の場ではマスクの着⽤が義務付けられています。テイクアウト以外のレストランやカフェの再開は 6 ⽉ 2 ⽇以降になるようです。

 

このような状況の中でのニースの⼈たちの実際の⽣活や変化について⼀部ご紹介したいと思います。そこで4名、観光ガイド業、展⽰会イベント設営業、美⼤卒業⽣、と警備猫の⽣活例を前編と後編に渡ってお伝えいたします。

 

 

 

 

ニース育ちのトマですが、実は2004年から2012年まで東京でイベントプロデューサーやファッションに特化したウェブマーケティングの会社の経営をしていました。⽇本語も英語もペラペラです。職業経歴も幅広くモデルやパリバージョンのスーパー戦隊フランス・ファイブの⻩レンジャーも務めていたことがあります。

 

ニースに戻ってからは観光会社に所属し、主にアメリカ、⽇本、イギリス、オーストラリア、ロシアからのお客さんをガイドしていました。⾃らも旅好きで旅⾏のノウハウやお客さんが喜びそうなスポットをたくさん備えているので正に天職です。
今年からは会社に属せず⾃分で営業をし始めているところでした。

 

 

 

急に仕事がなくなっても、、

 

3 ⽉に⼊り旅⾏のキャンセルが続き、そのうち直ぐに外出禁⽌令が出され、観光業は真っ先に停⽌してしまいました。そんな急に仕事が無くなって不安ではなかったのでしょうか?「フランスではショマージ(失業⾦)が出るから、焦らなかった。」会社に勤めている⼈は、普段の収⼊額の84%が直接今まで通り会社から振り込まれて、その後、政府がまとめてそれぞれの会社にその分のお⾦を⽀給するというシステムです。1*トマも前は会社で働いていたのでその分から失業⾦が出るそうです。彼の場合は⾃分で⼿続きをしないといけませんが、オンラインでスムーズにでき、実際毎⽉ちゃんと振り込まれているそうです。個⼈個⼈が窓⼝に⾏って、⻑蛇の列に並ばなくても良いこのシステム、理にかなってます。

 

1* フランスの部分的失業金制度
https://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2020/04/france.html

 

 

 

 

 

外出禁⽌中のチョコレートブラウニー

外出禁⽌中、運動はヨガやウォーキングをしたり、映画を観たり、蕎⻨が⼤好きなので蕎⻨を打ったり。友⼈が経営しているレストランが発信しているレシピを⾒て、オーガニックでグルテンフリーのチョコレートブラウニー作りも挑戦。2* お菓⼦は今まで全然作ってなかったけど、これは美味しくて2度も作ったとのこと。なんと材料に⽩味噌も⼊っているのだとか。卵の代わりにチアシードで粘度を出すために使ったりして、免疫増強にも良さそうです。(ご興味のある⽅は参考資料をご覧ください。)

 

2* グルテンフリーのチョコレートブラウニーの作り⽅ by Koko Green
https://www.instagram.com/tv/B-fAFC6DTCP/?igshid=1qn1z34pcbvno

すみません、フランス語の動画です。

 

材料:

CHOCOLAT NOIR = ダークチョコレート 200g
MISO BLANC = 白味噌 大さじ3杯
HUILE DE COCO = ココナッツオイル(無臭)135g
SUCRE DE COCO = ココナッツシュガー 300g
FARINE SANS GLUTEN = グルテンフリー粉(米粉)115g
GRAINES DE CHIA = チアシード 大さじ4杯
SEL = 塩 小さじ1杯
EAU = 水 275ml
後の手順は、画像で分かると思います、、。

 

 

 

 

 

観光業から発想の転換

 

それから、⼀⼈暮らしで⼈と話す機会が減ったので声を出す練習として、歌のアプリをダウンロードして歌う練習を始めたそうです。こんなアプリがあるんですね。
「ちょっとずつ上⼿くなってきた。」と実際に効果が出ているそうです。今度は歌⼿にでもなろうと思っているのかなと思いきや、「不動産屋をしている知り合いと話してて、それも良いなと思ってる。⾃営業でできるだろうし。⽇本⼈相⼿にとか。」⾊々考え中だそうです。トマの友達で、こちらも観光業をしていた⽅は今、ZOOM と⾔うビデオ通話を使ってフランス語の先⽣をやっているそうです。また観光の仕事がいつ戻ってくるのか⽬処が⽴たない中、やはり別の職業を皆さん考えているようです。

 

観光業つながりで、2 ⽉の記事(“水の都”で繋がる熊本の姉妹都市エクス・アン・プロヴァンスと満員御礼の浮世絵展)に登場した熊本城彩苑のイベント企画・販売促進の仕事をしている⻄村さんにもチラッとこれからの熊本の観光業の戦略を伺いました。城彩苑はここ1年観光客だけじゃなく地元ターゲットもすでに視野に⼊れていたそうです。その戦略を強化したり、オンラインの熊本名産お取り寄せで熊本に⾏かずとも熊本⼟産を楽しんでもらうなど。「具体的には、四季折々の産物を使った限定グルメやグッズを商品開発して情報発信強化。各種媒体を使⽤して、城彩苑の地元認知度向上(⾝近な観光地、⾝近な⾮⽇常を作りだす)、イベント回数を増やしたり、客単価アップは⾒込めないので来苑客数(1グループあたりのの客数+地元来苑者数)を増やす。」などなど。「世界が変わるんだから、観光産業も変わらないとね!不要不急の外出に⽂化、観光、スポーツは省かれてると。関連産業の⽅々怒ってるけど、逆に必要になる形とかあり⽅に変えるチャンス!」と⻄村さん。世の変化を楽しみながら仕事をしている様⼦を聞いて、私の⼼もポッと明るくなりました。

 

 

 

 

緑が欲しい

 

外出禁⽌中にトマは思いました、「緑が欲しい!」「⼩さい家と庭を持って植物を⾃分で育てて、お店に⾏かなくてもそこである程度まかなえるようにしたい。家も⼟地も安いイタリアが良いかもしれない。」このパンデミックのような状況がまた来ると想定するとそう考えずにはいられないと⾔っていました。

 

 

 

内⾯の変化

 

規制緩和の⼀週間⽬の今は、海岸沿いの歩道を散歩したり、公園の芝⽣の上に寝っ転がったり外の⾵景を楽しんでいるそうです。インタビューをしたこの⽇はコンタクトレンズを買いに⾏ったということで、その時のエピソードを話してくれました。「店員さんがフェイスシールドをしていたんだけど、それがキツかったみたいで、しょうがないから外してマスクだけで接客していたら、上司からすごく怒られていて⼤変そうだった。」客が触っためがねは⼀個⼀個毎回消毒。洋服の店も客が試着した服は全てスチームアイロンをかけてしばらく放置したり。「どこも本当に⼤変そうで、助けてあげたい気持ちになった。今センシティブな時だから⼈々のコミュニケーションの取り⽅にも⼈間性を感じる。ある意味エゴ(⾃我の壁)が消える。⼈が前より柔らかくなってる。」と⼈々の内⾯の変化も感じているということでした。

外出禁⽌令解除後の髪も髭ものびたトマ海岸を散歩

 

 

 

こういう時こそ楽しみを作る!

 

トマは海に潜るのが趣味です。前から夢⾒ていたけど、最近またより⼀層ハワイに⾏きたいと思うそう。また、今年の冬はスイスの近くのスキー場がある別荘に友達と⾏く計画です。熊本の美味しいトマトを⾷べに⾏きたいなと⾔っています。「こういう状態だけど楽しみを作るのは良いよ!」とトマ。様々なことに挑戦し、⾊々な世界を⾒てきた彼は常に前を向いていて楽しそうだなと思いました。

 

 

 

 

⽣まれも育ちも不明ですが、丁度外出禁⽌令が出た数⽇後に私たちの学校にやってきました。私たちの学校にはいつも4〜5匹の猫が住んでいて、それぞれに名前がついていて、みんな⿊とか茶⾊で⽬つきもちょっと鋭いダーク系猫だったのですが、急に⽩い猫が⼊ってきてすぐに皆んなの⽬につきました。そしてある⽇、学校⻑の奥さんのアンが街中に降りて⾏ったところ「猫探してます」の張り紙がしてあるのに気づきました。正にこの⽩猫のことでした。

 

 

フランス語で Mimi=かわいい

 

名前は Mimi (ミミ)。フランス語でかわいいと⾔う単語は mignon (ミニョン)、省略して mimi とも⾔います。名前の通り⽬がちょこんとしていてかわいい顔をしています。全体でみると⽿の横⼀箇所と尻尾だけが⿊くて、なんだかちょっと不恰好な感じもある意味かわいい気がします。

 

 

 

外出禁⽌中の家出猫

 

直ぐにアンが飼い主に連絡をし、脱出した理由が分かりました。ミミの⽑が⻑くて絡まっていたので飼い主が⽑を刈ろうとしたところ、ミミはとってもびっくりして家を⾶び出してしまったそうです。捕まえて飼い主に戻すことを試みたのですが、警戒⼼が強く無理でした。今は、⿊猫のウィルソンとすごく仲が良くなりよく⼀緒に散歩しています。広々とした学校の敷地で⼼地よく過ごしているので、今はそっとしておこうということになりました。きっと私がミミだったら、不幸中の幸でこんな楽園に来れて、⾃分の意思で滞在しているのに連れ戻されたら悲しいと思います。ただ、今特に⼈との交流が少ない中で飼い主の⽅もミミがいなくて寂しい思いをしているからミミの写真を送ったり様⼦を時々伝えようということになりました。

 

 

 

 

ネズミ警備員としての役⽬

 

普段はすごく強いボス猫がいるのですが今は飼い主と帰省中です。その代わりにミミや彼以外の猫が私たちの敷地に滞在するようになりました。街中の飲⾷店が⼀⻫に閉じてしまって、ネズミたちも⾏き場所を失ってこちらにも来るんじゃないかと予測していたのですが、未だに私たちの汚いキッチンにもアトリエにもネズミは来ません。それはやはりこの猫たちのおかげではないかと思います。先⽇、ロシアのサンクトペテルブルクの美術館で⼤切にされている猫たちのドキュメンタリーを観ました。3* そこには70匹もの猫がいます。1740 年代ロシア帝国のエリザヴェータ⼥帝が絵画コレクションをネズミから守るために猫を宮殿に置くように命じたのが始まりだそうです。そして今はその宮殿がこの美術館として運営しています。猫と美術施設のお互いに助け合うこの関係は合理的で素敵だなと思います。ミミと他の猫たちに感謝です。

 

3* サンクトペテルブルクの美術館の猫たちについてのドキュメンタリー
https://www.youtube.com/watch?v=UnzoY4r3cOg

 

 

と⾔うわけで今回は観光業のトマと警備係のミミの最近の⽣活についてご紹介しました。どうでしょうかニースの⽣活の様⼦、半分ぐらい伝わったでしょうか。次回ご紹介する2名は、卒業を控えた芸⼤院⽣と展⽰会イベント設営の仕事⼈です。この2⼈を通してフランスの芸術界の今がミクロレベルで⾒えると思います!

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

Writer

マキコ 1988年熊本県生まれ。白川中学校を卒業後カナダへ。公立高校卒業、芸術大学卒業、キッズアートスクールで働き、バンクーバーの雨にうんざりしたのとカナダ滞在10年を区切りに帰熊。文房具屋、発達しょうがい児支援所、味噌・醤油・酢屋、熊大の非常勤講師、クラフトビールバー、個人的に英会話を教えるなどして、色々な職業を経験。今度はヨーロッパへの好奇心が押さえられなくなり、フランスで最も太陽が照る街ニースへ。ビラ・アーソン芸術大学院に就学中。

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