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パンをこよなく愛する人たち in ニース&熊本

あけましておめでとうございます。今年こそはパンパンパーンと進んでいけますように!と言う願いを込めて、フランスのパン事情と私が最近気になっているニースと熊本のパンを愛する人たちについて2号に渡って書きたいと思います。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

パン、パン、そしてパン。もはやフランスはパンに溢れている。

フランスに居ると、私は一日の内に数えられないぐらい何度もパンを目にします。朝、昼、晩、パンはフランスの食卓には欠かせない必須食品です。増しては外で道端に転がっていることもあるぐらいです。フランスでのパンの存在は日本で言うご飯にあたりますが、最近は3食の内の一食はパンを食べる人も現在は多いのではないでしょうか。そして、ご飯が道に落ちていることは日本ではまずないですね。

 

 

フランス人は基本的に“その日”に作られたパンを食べるので、朝は朝食用のパンを買いに行くところから始まります。日本ではコンビニが何処そこあるように、フランスの表通りでは5件に一軒がパン屋さんです。忙しい朝、起きてそのままパジャマ姿でサッと買いに行けるぐらいの感覚です。朝はクロワッサンやレーズンデニッシュのような甘いパン*を食べているのをよく見ます。昼頃からは特にバゲットを手に持って歩いている人を見かけます。そしてそれを食べながら帰る人が多く、バゲットの先端がなくなっているのもよく見かけます。日本の場合ちゃんと全部袋に収まっているケースがほとんどですが、こちらでは結構出てます。やっぱり出てると見えるから食べたくなってしまうし、特に出来立て熱々の場合は必ず食べてしまうそうです。

もう一つのバゲットのあるあるは、ホームパティーを開いたときにみんながパンを持ち寄るのでキッチンカウンターやテーブルがパンで異常に溢れることです。一本大体1ユーロ、120円前後でとってもお手頃なので特に貧乏学生のパーティーにはありがちな光景です。

 

 

フランスのパン屋に並ぶパンは大体この下の写真のような感じです。

お惣菜パンの種類はとても少なく、軽食用にはミニバゲットを使ったサンドイッチが主です。何よりも群を抜いて一番売れるのはシンプルなパン、例えばバゲットやカンパーニュ系の他の具材が混ざっていないパンです。
日本で言えばご飯とおかずのような感覚で、フランスでもパンはメインの料理に合わせて食べるのでシンプルなパンの方が多いのだと思います。
そんなパンパンパンの環境にある近所のパン屋の店主たちにどうしてパン屋をしようと思ったのかサラッと聞いてみました。そうすると、どの店主も「や〜、一日3食、パンは無くてはならないもので日常の一部だからねぇ。」「パンが好きだし、パンを作る工程も好きだから。」と店主たち。皆さん結構小さい時からパン屋になろうと思っていたと言っていました。

 

 

 

それでは、まずは簡単にフランスのパン事情をご説明しましたが、熊本ではどんなパン屋さんがあるのでしょう?

 

最近、熊本で雑誌やテレビに出るほど人気のパン屋さんがあると父が言っていました。その名もキチジツベーカリー。吉日。いかにもご利益のありそうな名前です。南区の住宅地の中、一軒家の一部を改装して営業しているらしいのですが、そんなちょっと分かりずらそうな所にあるパン屋さんがどうしてそんなに多くの人に知られるようになったのか。熊本でも今はたくさんパン屋さんがあると思いますが、その中でもキチジツベーカリーが注目を浴びているその理由についてすごく気になりました。私は私の好きな分野で言えば、世界で有名になる芸術作家はどうしてそんなに成功しているのか考えてみるのが好きです。このパン屋さんにも今の時代と照らし合わせて何か社会的に通じる重要な要素があるのではないかと思い、取材をしてみることにしました。

キチジツベーカリーのインスタグラムには食欲を誘う出来たてパンの写真がずらり。色鮮やかな具沢山のサンドイッチ、クロックムッシュ、スコーン、バナナブレッドなどたくさんの種類と、更にはイベント情報まで盛りだくさん。
写真と一緒に店主の陽気なコメントが添えられているのですが、それはまるで本人が目の前で喋っているかのようにパンに対するワクワク感が直に伝わって来るのです。

 

インスタグラム:https://www.instagram.com/kichijitsu_bakery/

 

 

 

お母さんが毎日家族に食べさせたいパン

どうしてパン屋をしようと思ったのか?「私(店主)の中でのイメージ、パン屋さん=優しい幸せな空間。」「日常に近いものを販売して、特別なお店よりも、お客様の日常になりたい。」この思いに心を打たれました。私自身、芸術大学に通いながら私が作るものがどう人のためになるのか、いつも大きな課題です。ところでそのキチジツベーカリーの店主が去年の暮れの大掃除中、昔自分の思いを書いたメモを見つけたそうです。そこには、「お母さんが毎日家族に食べさせたいパン」と。。。その一言からたくさんの思いが伝わってきます。美味しいパン、安心して食べられるパン、身近なパン、子供たちがニコニコしながら食べているイメージが湧いてきます。

 

 

 

 

“シンプル”が美味しい

そのコンセプトは作る商品に直接現れています。例えば、結構な支持を得ているキチジツベーカリーのカンパーニュ(ハード系パンの一種)は「バターなどの油脂やお砂糖などの糖分が入らず、とてもシンプルな材料で作るので、原材料を気にする妊婦さんや、授乳中の方にも、安心してお召し上がりいただけるものだと思い、必ずメニューに入れたいと思っていました。」と店主。
日本では今までハード系のパンはそこまで大きな存在でではなかったと思いますが、最近は昔に比べてよく見るようになってきました。これは世界規模で情報や人の行き来がよりスムーズになった現代の影響で美味しさや、食べ方なども含め、その本場の味を上手に表現できる作り手のノウハウや技術力のおかげだと思います。流行りに関係なく本質的に良いものが売れるというのはとても大事なことだと思います。

ちなみに店主お気に入りのパンを聞いてみました。「食パンの耳かなぁ、、」「プチカンパーニュを焼いてオリーブオイルとデュカ*で食べるっていうのも好きです♡」「基本、生地を楽しみたいタイプなので、具材の入ってないものにほんの少しの何かをつけて食べるスタイルが本当は好き。」店主自身がシンプルが好きだからこそなるべく余計なものを使わず素材を活かすパン作りができているんですね。

 

 

 

いつも焼きたてのように熱い思い

昔一度フランスに行った時のパンの思い出も語ってくださいました。「やっぱりクロワッサンがどこで食べても美味しかった♡朝まだ夜明け前にパン屋さんが開店していて、そこで買ったクロワッサンを食べながら歩いた思い出、今思い返してもワクワク♡」絶対またフランスに行きたいと店主。実はこのオンライン上での取材中、お店を冬休みで締めている間も関東
のパン屋を駆け回り、それぞれのお店のパンとそこの空間を視察に行っていたそうです。心からパンを愛し、お客さんにまたより良いものを届け、気持ち良い気分になれるパン屋さんでありたい。お店を開く前からブレないその気持ちはまるで外はカリッと、中はあったかふわふわな焼きたてのカンパーニュように感じられました。

 

 

 

 

キチジツベーカリー店主 吉井 千晴

 

 

いかがでしたか?
日本とフランスではパンの存在の意味が大きく異なります。
フランスではかなり当たり前で身近な存在であるパンですが、日本の食文化はお米が主流ということもあり、各家庭に必ずあるものではありません。
もっと沢山の人にパンを手にとってもらい、いろんな楽しみを見つけて欲しいです。
パンを作る人にとって”思いを持って作る”ということは、どこの国でも変わりませんからね。

 

 

そして今回取材させていただいた、このキチジツベーカリーの店主、実は私の従姉妹なんです。親戚で宣伝かと思われるかも知れませんが、全くその通りです。いえいえ、私が宣伝する必要なく、有り難いことに商品や日によっては完売しちゃうこともよくあるようです。インスタグラムやフェイスブックにてお店の様子を見ることができます。ご興味のある方は是非チェックしてみて下さいませ。

 

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kichijitsu Bakery(キチジツベーカリー)
営業時間:10:00~17:00
※売り切れ次第終了
定休日:日曜、月曜(臨時休業有り)
住所:熊本市南区良町 1丁目4-11(イートイン有)
電話番号:080-3907-1983
Instagram:https://www.instagram.com/kichijitsu_bakery/
Facebook:https://www.facebook.com/kichijitsu.bakery/

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パンで自分の気持ちを届ける、表現する、パンを愛する人たちのテーマで今回は熊本のキチジツベーカリーを紹介しました。次は、パンをテーマに作品を作るニースの芸術学生のお話です。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

P.S. ニースのお惣菜パンといえば・・・!

フランスではお惣菜パンというのは日本のようにたくさん種類がありません。そんな数少ない中で、しかもニースにしかないお惣菜パンがこちら。ピッサラディエと言います。これはもはやもう“パン”ではなくピザに近いのですが、平たく伸ばしたパン生地に玉ねぎを飴色になるまでソテーしたもの、ニース産の黒小粒オリーブ、アンチョビ一切れをちょんと乗せてあります。玉ねぎの甘みとアンチョビとオリーブの塩味で甘辛ハーモニーを奏でています。やはりニースはイタリアに近いのでその雰囲気も具材に現れていますね。

 

*甘いパン(菓子パン系)は正確に言うと、フランスではパンではなく、ヴィエノワズリーという部類に入ります。
*デュカとは中東発祥で、ナッツとハーブを調合したものです。キチジツベーカーリーでも自家製デュカ販売してます!

 

 

Writer

マキコ 1988年熊本県生まれ。白川中学校を卒業後カナダへ。公立高校卒業、芸術大学卒業、キッズアートスクールで働き、バンクーバーの雨にうんざりしたのとカナダ滞在10年を区切りに帰熊。文房具屋、発達しょうがい児支援所、味噌・醤油・酢屋、熊大の非常勤講師、クラフトビールバー、個人的に英会話を教えるなどして、色々な職業を経験。今度はヨーロッパへの好奇心が押さえられなくなり、フランスで最も太陽が照る街ニースへ。ビラ・アーソン芸術大学院に就学中。

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