野口 春華

 

 

AHP:
それでは、よろしくおねがいします!
あなたの事を教えて下さい

 

 

野口春華:
よろしくお願い致します!野口春華です。
(アーティスト名を記入するAHPの姿を見て)字は、春巻きの「春」に中華の「華」です。

 

 

AHP:
それいいですね(笑)

 

 

野口:
いいですよね(笑) 私は気に入っています。
1991年 熊本生まれ熊本育ち、2013年に沖縄県立芸術大学絵画/日本画専攻を卒業して帰熊しました。26歳です。

 

 

AHP:
なぜ沖縄を選んだんですか?

 

 

野口:
んー漠然とですけど沖縄県芸がいいなと、沖縄行ったことないし、そうですね、、、改めて聞かれると何ででしょうね(笑)あの時は沖縄に行きたかったんだろうなぁ。実際は別の志望校に落ちたから、という事情もありますが卒業した今となっては、沖芸に進学できて良かったと本当に思います。
大学では4年間、日本画の学生が取り組むには理解し難いとも言える画風を貫いてしまいましたが、それらを許容し、自由に制作をさせて下さった先生方や同級生には感謝しています。とても環境に恵まれていました。

 

 

AHP:
いつから日本画に興味を持たれたのですか??

 

 

野口:
小さい頃から美大・芸大に憧れていたのもありましたが、高校時代に、卒業生の先輩が画塾みたいなものを開いてくれて、現役の芸大生の課題作品や、デモンストレーションのデッサンを見た時にダントツで日本画の作品やデッサンに魅力を感じました。その後、授業で実際に和紙や日本画の画材に触れて面白い!綺麗!これだっ!!て思いました。
小学生からずっと書道を続けていたのもあり、筆と親和性がすごく高く、肌に合っていると感じたことも影響しているはずです。自分で墨を磨って画材を調合して、和紙に触れながら色んな筆で制作するのが自分に合っていて、日本画だ!と決めました!

 

 

AHP:
それで日本画へ進んだんですね。

 

 

野口:
はい。進路を沖芸に決めた時は、えー!よりにもよって沖縄なの!?と高校時代の美術の先生方に言われました。
遡ると、沖縄は日本美術史の枠組みから見てもずっと違う国のような歴史の流れ方をしていることが特に大きな要因なのではと思います。しかし沖芸には東京藝大・五美大を卒業された先生が在籍されており、アカデミックな技法や制作への取り組み方をお教え頂きましたのでその点についてはあまり関係なかったな、と私は思います。

 

 

AHP:
今の画風に至ったのはいつ頃ですか??

 

 

野口:
18、19歳の頃、急に美大に進学した不安に苛まれたり、人間関係のことで自暴自棄になりかなりネガティブな時期があってその感情を画面に吐き出し続けた時期がありました。気持ちが落ち着いた頃に、ふとその時の作品を見たら、あれ?なんだか魅力的だな、と感じることができました。個人的にですが、面白いじゃんと思えた。
これまで「オリジナリティがないのでは」とか「他の作家の二番煎じではないか」「デッサン下手なくせに」とか、周りからの評価をとても気にしていましたが、描きたいという衝動だけで取り組んで描けたのだから気にしなくていいじゃん!と気づきました。このキッカケが現在の制作に繋がる転機になりました。描けばなんとかなるから、これからもそのスタンスでいこう、難しいことを考えずにその時自分が描きたいもの、考えてる事を落とし込んだらいいんじゃない、と思えましたね。今では完全に克服してポジティブなのか、というと全然ネガティブなんですけど(笑)

 

 

AHP:

なるほど、そこが分岐点になったんですね。作品について詳しく教えてください。

 

 

野口:
私は作品を観る人各々の想像力を膨らませることができるような、作品づくりをしたい。一目瞭然でコンセプトがわかりやすい作品も魅力的ですが、ポジ/ネガティブな印象が共存しているような自分の今までの経験や、読んだ本の登場人物に感情移入したときの感覚のようなものを表現/共有/引き出すことができたらと。まだまだ心象風景とまでは言えないかもしれませんが、”この登場人物には一体どのような物語があるのだろう”とか。
作品の登場人物にはあまり表情豊かな人はいません。目元や口元の表情ではなく、指先の動きや、体幹の力加減、重心の位置、裾の動きなどから、顔は無表情でも”表情豊かだ”と感じて頂けるようこだわりを持って取り組んでいます。

 

 

AHP:
いま改めて作品見ていいですか?

 

 

野口:
どうぞ。

02のコピー

獅子舞ゐ 50×130/cm 2011年

 

 

 

 

AHP:
独特ですよね。
これ日本画ですよね??
ん??
画材が牛乳??

 

 

野口:
これは水でぼかす所と差をつけたい時に、より油分の高い煮沸した牛乳を使います。雑菌が繁殖しないように、というのもありますが

 

 

AHP:
これは日本画の技法なんですか??

 

 

野口:
経緯はわかりませんが、大学の恩師に教わった技法です。

 

 

AHP:
日本画の特徴ってなんですか?

 

 

野口:
個人的には主線の表情の豊かさと繊細さですね。平面的な色面構成のような展開やマチエールの豊かさよりも、自分はここに線を引いて命を吹き込むぞという緊張感が日本画とされている作品達の方が顕著かなと思います。
"日本画"は明治時代に西洋絵画が日本に進出した際、それまでの"日本で描かれたもの"とを区別するための言葉であるというのがよく理解でるほど、無限に多様化している現代に於いて岩絵具と和紙を使っただけで日本画であるとラベリングするのは安直なのでは??と考えています。
それでも、あえて”日本画とは何か”と問われたら、線の役割や意味に比重を置いたものであるのでは、と答えています。

 

 

AHP:
作品を作る上でやはり日本画という技法は
春華さんにとって重要ですか??

 

 

野口:
よく聞かれます。こういう画題・画風なので学生の頃も日本画専攻だからと和紙や筆致にこだわらなくて良いのでは、と言われたこともありましたし、よく理解できますが、今自分が取り組みたいものに合う技法ですし、何と言っても筆が好きなので。
最近では作品の依頼を受けることもあり、和紙や筆以外の画材で描くこともあります。出身大学や専攻がどうであれ、その時表現したいものに合わせて画材やジャンルを変えるのに抵抗しなくてもいいのでは、とも考えています。

 

 

AHP:
そうですよね。変な質問してしまったなと思いました。
やっぱり自分の体に馴染んだものがって事ですよね。

 

 

野口:
そうですね、やはり筆とは相性がいいのかもしれません。それに人体の主線を描くときも骨格の強弱や重量感も墨のノリ具合ひとつで体に陰影つけなくて表現できる。
すごくないですか!?私はかっこいいと思うでんすよ!先人たちの線は思わずひっくり返るほど素晴らしくて。。。
【作品について】あ、この細かい描写も筆です。実は細字のペンよりも描きやすいです。

 

 

05のコピー

まつ (部分) 2013年

 

 

 

 

 

03のコピー

獅子舞ゐ (部分)

 

 

 

 

AHP:
え?ココ??鉛筆とかじゃなくてですか??

 

 

野口:
そうです。このハッチングは筆の方が綺麗に描ける、ボールペンとかだと微妙な腕の動きや和紙の繊維に引っかかってダマになったり、余計な癖が出てきてしまいます。幸運な事に、和紙と膠(ニカワ)と墨と筆が、たまたま私が描きたいものにマッチしました。

 

 

AHP:
その細部までのこだわりが作品のクオリティにつながっているんでしょうね。ほんとにすごいと思います。

 

 

野口:
わたしなんかまだまだです

 

 

AHP:
今後の展望などありますか??

 

 

野口:
来場者や家族の支援もあり、今秋開催される<三姉妹展>は三回目を迎えることができました。(2017/9/27現在)今後は東京の展覧会だけではなく、地方/九州・沖縄でも何らかの発信の機会を得たいです。その一つとして<九州コミティア>には期待を込めてサークル参加をしています。実現に至るにはまだまだ自分の作品に納得できていないので、クオリティの高い作品をコンスタントに作り続けなければと思っています。そこをクリアしないと今後の活動に繋がらないので、目的を忘れずに邁進しなければいけませんね。

 

ahp01

 

ahp04

 

 

 

 

AHP:
自分なりに納得というか、できた!と思える瞬間ってどういうタイミングですか??世に出せる作品を作りあげるまでというか、、。

 

 

野口:
ん~そうですね。。
この〈獅子舞ゐ〉の作品は丸1ヶ月。といっても画面上に手を動かし始めてから最低でも1ヶ月なので。〈更衣室〉も小さい作品ですが、このサイズでも三週間は欲しいです。

 

ngh_10

 

 

 

 

AHP:
そうですよね、それまでに試行錯誤を繰り返すわけですから、
もっとかかりますよね。

 

 

野口:
そうですね。でも、この作品はなんと云うか、かなり安産でした。背景の模様も下地の段階からコツコツ描いてますが、それでもノンストップで集中できたので一ヶ月で十分でした。 

 

 

AHP :
こちらは??

 

 

野口:
この作品〈まつ〉は難産でした。実質の制作期間は丸3ヶ月くらい。と言っても構図が決まればハッチングで画面を埋めるだけなので、そこまでが大変です。作品完成に要する2〜3ヶ月の時間を自分で設けて、きっちりそのスパンで制作に取り組むと云う行為、モチベーションを保ちつつ、コンスタントに続けるということが社会人ではどれだけ大変なことかと改めて実感しています。

 

 

AHP :
そうですよね。もう学生じゃないからまず生きていくために時間作って、それから制作ですもんね。

 

 

野口:
そうです。ほんとそうです。本当に。。。

 

 

AHP :
ぼく、アーティストとしてコンスタントに活動続けること、誰にでもこなせることでは無いと思います。尊敬します。よく続けられるなぁと。安産、難産の話ではないですが、毎回、我が子を生み出すような行為をしていて、それってもうお金とかそんな次元をはるかに超えていると思います。本当に、本当にすごいと思います。

 

 

野口:
これまで何回も、まさに今も自分は作家としてはやっていけないなと諦め気分になりますが、いざ手を止めると落ち着かないですし、発信したくて仕方ないのでやっぱりまだ諦められないな、と思います。年甲斐もなく(笑)
活躍している作家はこの世にたくさん居るし、わざわざ自分が描くこともないかと考えたこともあった、というのが大きかったでしょうか。今では全く無くなりました。もし作家活動を休止しても、わざわざ辞めます、とアナウンスするつもりもありません。私にとって描くことはライフワークなので、マイペースに取り組めばいいやぁ、と気楽に考えています。

 

 

AHP :
描きたいんですもんね。

 

 

野口:
はい!語弊があるかもしれませんが、適当な紙とペンさえあれば手が動いてしまうので。気分が乗らずともいつのまにか作品が完成していることを何度か経験してます。その積み重ねがあるので、この先私の人生がどう転んでも、それこそ作家としての活動を絶っても"描く"ことは一生辞められないのだろうな、と思っています!

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