ARTICLEアーティストのリアルを届ける特集記事
「デザインあ展」、富山・東京・山梨と開催され、ついに熊本にやってきました。会場は、熊本市中央区上通町にある熊本市現代美術館。熊本の“マチ”中で、最新のアートの風を吹き込んでくれる刺激的な場所です。「デザインあ展 in KUMAMOTO」は、ここで6月30日(日)から9月8日(日)まで開催されています。
「みる」「考える」「つくる」のデザイン的思考
-「デザインあ」は、子どもたちにデザイン的思考を伝える番組として、2011年にスタートしました。番組では、身のまわりに意識を向け(みる)、どのような問題があるかを探り出し(考える)、よりよい状況を生み出す(つくる)という一連の思考力と感性を「デザインマインド」ととらえ、斬新な映像表現を用いて伝えてきました。-
(主催者あいさつより)
「みる」、「考える」、「つくる」の「デザインマインド」。「デザイン」と聞くと、「おしゃれでカッコいいもの」をイメージするかもしれませんが、ここでいう「デザイン」は、どうやらそれだけではなさそう。いったいどんな展示になっているのでしょう。
会場に入るとまず迎えてくれるのは、みんなの描いた「あ」。ずらりと並ぶそれぞれの「あ」。同じ「あ」でも、人によっていろいろな見え方があって、その人が捉えた「あ」の世界を、今度は私たちに見せてくれています。
「デザインって、なんだろう」。
ここに来ると、そう思う人もいるはず。
ぜひ、ディレクターズメッセージを読んでみてください。総合ディレクターの佐藤卓さん、映像ディレクターの中村勇吾さん、音楽ディレクターの小山田圭吾さんが、“おとなの方へ”、“こどもたちへ”、この展覧会について、「デザインマインド」について語っています。
当たり前の世界を、じっくり見てみよう
さあ、いよいよ「デザイン」の世界がスタート。展示は「観察のへや」、「体感のへや」、「概念のへや」の3つに分かれていました。
まずは「観察のへや」。そこには私たちの身の回りにある「モノ」や「音」が広がっています。日常で当たり前にある、形・音・文字や数字。当たり前にあるものをじっくり観察してみると、何が見えてくるのでしょう。ワクワクや、思いもよらない発見、ひらめきかもしれません。
-「つくる」ことのほとんどは「みる」ことです。-
映像ディレクターの中村さんはこう言っています。「みる」ことから始まる、ということでしょうか。
それでは、「みて」みましょう。まず上の写真。岡崎智弘+スタンド・ストーンズの作品「抽象度のオブジェ」。男女の模型がだんだんと抽象化されていき、最終的に残る要素は?作者は男女の何を見たのでしょう。
野村律子「あの手 この手」。あなたはこの作品の何を見ますか?
へやを進んでいくと、「デッサンあ」のコーナー。そしてそこに、熊本城!?
ここでは、来た人が自由にデッサンできるように、お城の周りに紙と鉛筆などが一式用意されています。考えてみると、デッサンはモチーフをじっくり観察して描きますよね。「みて」、「考えて」、「つくる」作業。さっそく、私もトライしてみました。
描いたデッサンは、その場でスキャンして、ほかの人が描いたものと一緒に会場のモニターに映し出されます。ほかの人のデッサンを見ていると、自分とは違う視点。「あ!こういう描き方もあるんだ」と思わぬ発見も。
展覧会ホームページでも、みんなの「デッサンあ」をみることができますよ。
デザインされたものに触れる。
そして、「デザイン」が近くなる。
「体感のへや」は、360度映像に囲まれた四角い部屋。音と映像が体に染み込んで、異空間に迷い込んだみたい。「デザインマインド」を、より感覚的に感じる作品です。ユーモアあふれた映像たち。この感動は、体感しないとわかりません!
中村勇吾/音楽:小山田圭吾 「あ」のテーマ
最後に「概念のへや」に辿り着きます。
ここでまた、「デザインってなんだろう」と思うのです。
時間、空間という目に見えにくい「概念」に、形が与えられ動くことによって、目に見える「モノ」になっています。それが、妙に納得いくもので。
「デザインマインド」によって生まれたものたちに触れると、「デザイン」って、私たちの“遠いところ”にあるものではなくって、“日常の中”にある要素を見つけて、その要素をもとに生み出されたものなのかなと思えてきて。
生みだされたものは、また日常の中に入って、人を納得させ、楽しませ、よりよい日常をつくっていくのかな。
「デザイン」って、面白い。
へやの外に出ると、最初に見た『みんなの「あ」』を描くスペースがありました。
あなたは何をみて、考え、描きますか?
「デザインあ展 in KUMAMOTO」、ぜひ体感してみてください。
https://www.camk.jp/exhibition/design-ah/
text:yururi to furari