「シルクスクリーンで歴史を作る」ー古着に魅せられたDARGOの成松大輝が、ローカルから提案するアメカジとは?

 

11月11日に開催された、第4回「Art Human Festa2018」。出店した若手クリエイター=アートヒューマンたちに、「日々のモノづくりで考えていること」、「モノづくりに賭ける想い」について聞くインタビュー企画の第5弾です。インタビュイーは、手刷りのプリントにこだわるT-shirtブランド“DARGO”を運営する成松 大輝さん成松さんは、全てのT-shirtのプリントを自らシルクスクリーンで刷っているそうです。

 

 

 

 

最近念願の独立店舗をオープンされたばかりの成松さんに、新店に対するこだわりや、アイテムづくりに懸ける想いについてお聞きしました。

 

 

 

INTERVIEW FILE 05 DAIKI  NARIMATSU

 

 

 

 

 

縁で生まれた店を、ひとりひとりの顧客を大切にすることで継続させる

 

 

ーーブランド立ち上げ3周年を迎えて、自分のお店をオープンされたんですよね。

 

そうですね。元々は「ジョンブルアンティーク」という、大きな家具屋さんの一室を間借りさせてもらって、そこで2年半「DARGO」の服を販売していました。ただその時から、独立店舗を持ちたいという想いはありました。

 

ーー何故、街の中心ではなく郊外でオープンされたんですか。

 

元々郊外で開店したいと考えていました。理由は、まだ「DARGO」のブランドを立ち上げる前に、アパレル会社で雇われ店長をしていた時の経験からです。

 

2013年~2015年くらいに、InstagramをはじめとするSNSが流行って、実店舗がなくても気軽にお店を開けるようになったことで、オンラインショップの出店ラッシュが起きて、一店舗あたりの売り上げがどこも下がってしまったんです。

 

その時にちょうど郊外のお店を雇われ店長として任されることになって、どうなるかなと思っていたんですが、子供が生まれてパパやママになった人たちが「街に子どもは連れて行けないけど、家の近くの服屋なら寄れるし息抜きができる」ってよく遊びに来てくれたんです。ただ服を買うためだけならSNSでもいいんだけど、買い物をしながら会話する時間も楽しみに来てくれていたというか。

 

郊外だと立て込まずにお客さんが来てくれるので、ゆっくりと喋ることができて、商品や店の魅力を知ってもらいやすかったり、その結果信頼いただけたりと、日を追うごとにリピーターさんが増えていきました。

 

無人で安いたたき売りの服を買ってもらうんじゃなくて、買うかどうか悩むくらいの価格設定の服を、その服の背景や着こなしなどを提案することによってご購入いただく。そういう買い物を楽しむ時間を提供していきたいから、自分が独立店舗を持つなら街ではなくて、郊外がいいと思っていました。

 

ーーなるほど。

 

 

 

 

今の場所に決まったのは、完全に縁です。お店「DARGO」の目の前に「ヨダレカレー」っていう、常に行列ができる人気カレー店があるんですが、元々狙っていた物件が熊本地震の影響で駄目になって落ち込んでいた時に、そこへランチしに行ったんです。そしたら、店主の坂本さんが「最近どう~?」なんて話しかけてくれて、物件が振り出しに戻った話をしたら、すごい忙しい中ご尽力くださって、今の物件の大家さんをご紹介くださったんですよね。

 

ーー不動産会社で見つけたのではなく、人の縁で決まった場所だったんですね。カレーを食べたあとに服を見に寄ってくれるなんてこともありそうですね。

 

そうやって一緒に、南区エリアを盛り上げていけたらって思っています。また、たまたまというか、それこそ縁かもしれませんが、僕元々この辺の生まれなんですよね。だから店のオープンを機に帰ってこれたというか、結果、地元に還元できる環境で働けているのは嬉しいことですね。

 

ーー仕事をすごく楽しまれているのが伝わってきます。ブランドを立ち上げてからは、ずっと順風満帆でしたか?

 

自分のお店を持つ前の、最初の1~2年目とか、店舗の売り上げが全然なかったですね。当時はオンラインストアを主軸に販売していたのですが、「今月やべえ…全然回らないな」みたいな。でもその頃関西に住むお客様が、何回も注文してくださったんですよね。同じ品番で2色買いをして、他の品番でも2色くださいみたいな。

 

ある8月、もうどう考えても支出の方が多い時期で、「売り上げが足りない…」って頭をかかえてたら、スマホがピコンと鳴ったんです。見たら、その人からの注文で。8月頭に3枚ぐらい買ってくれてたのに、下旬に違うやつをまた3枚ぐらい買ってくれたんですよ。

 

ーー「DARGO」の服を本当に良いって思ってくださってるんでしょうね。

 

もうプリントしながら泣いちゃって。出来て日も浅いブランドを親身に感じてくださってるような気がして、その人にはいつか会いに行って、ぜひ直接お礼をしたいなと思っています。

 

ーーしんどい時期を常連のお客さんが助けてくれたんですね。

 

 

 

 

 

セレクトショップで店長をしていた時には、売り上げをあげて、とにかくたくさんの人に服を着てほしいと思っていたんですけど、そのー件があってからは、「DARGO」の商品をリピートして買ってくださる人たちに、どれだけ継続して商品を提供していけるかってことを大切にするようになりました。

 

それで、せっかく「DARGO」の商品を見に来てくれた人たちひとりひとりに、より良い提案をしていける、こじんまりとした場所が欲しいなぁっていう想いが強くなってきて、本格的に独立店舗を作るために動きだしたっていう感じですかね。実際店がオープンしたって報告すると、常連のお客さんがすごく喜んでくれて……嬉しかったですね。

 

 

Art Human Festa2018で新作の5色刷りのスウェットを発表「目指すは49色」

 

 

 

 

ーー何故シルクスクリーンを使って、プリントしようと思ったんでしょうか。

 

雇われ店長時代に「俺って販売員として、どれくらいのレベルにいるんだろう?」と思ったのがきっかけです。

 

熊本にはすごい先輩たちがたくさんいて、どうやって超えていこうかと考えた時に、自分はお客さんに服の説明をしたり、着こなしの提案をしたりしているけれど、自分で服を作ったことがないなって気づいたんですよね。そこで、それなら一個くらい自分で制作をして、産みの苦しみを味わってみなきゃなと考えました。

 

ジーンズとかだと難しいけれど、「Tシャツ一枚ぐらいなら作れるんじゃないか?」と夜中に色々ネット検索をしたら、3万くらいでできるってことが分かって。

 

キットを揃えて、自分でまず一色刷りをやってみたんですよ。そうしたら、もうプリントされたインクの輝きが、市販のものとは比べ物にならなくて。

 

大量生産に向いていない材質のインクを使用しているので、なかなか量産系の工場はそれを使わないのですが、色合いは抜群に最高なんです。

 

ーーでも、当時は雇われ店長もされていたんですよね? どうやって同時進行で、独立の準備もされたんですか?

 

気合いですね。深夜2時まで店で働いて、帰宅したら3時。そこで寝てしまうと1年後にも、店の人以外の何者にもなれてないんで、じゃあ毎日あと2時間仕事をしてから寝ようみたいな。

 

 

毎日職場から帰宅したら、良いボディをネットでカタカタ探して、見つかったらその業者の電話番号をピックし、自腹で品番を全部仕入れる。それらを何回か洗って、どのボディが一番古着っぽく仕上がるのか確認して。その時に厳選したボディを今でも使っているんですが、そういう試行錯誤を毎日重ねて、2時間でも週に6日続けたら12時間、それを4週やったら48時間、それを12ヶ月続けていったら……。やるやらないで全然違うため、毎朝5時まで絶対にやってやるみたいな。

 

ーーそれで体は崩されなかったんでしょうか?

 

崩さなかったですね。今が59kgで当時は51kgくらいなんで、痩せてはいましたが。

 

ーーそういう生活をどれくらい続けたんですか?

 

1年くらいですかね。自分として納得のいく商品を作れるようになるまで、わかんないことだらけで。でもその時に、そんだけ踏ん張ってでも「良いTシャツを作りたい」って思えるくらい、服が大好きな自分の気持ちを再確認できましたし、「これなら何があっても、耐えられるな」っていう妙な自信もつきました。

 

 

 

ーー前回のインタビューでは、熊本ではまだない「49色刷り」のTシャツを作るのが目標という話でしたが、そこへの想いは変わっていませんか?

 

そうですね。一応今月、「DARGO」初の5色刷りを発売したんですが、Art Human Festa2018当日に間に合うように刷って行って、それが新作のお披露目日でした。

 

 

 

 

何故色を増やすことを求めるのかというと、まだそれを誰もやっていないから。まだやっていないことを東京や大阪の都心ではなく、ローカルな熊本から発信したいんですよね。

 

理由はもう一つあって、昔の古着のTシャツ…僕が学生時代にはじめて古着屋に通い出したころに並んでいたアメリカのTシャツは、色鮮やかなものが多くて。それを、僕が初めて見た時の感動をみんなにも体感してほしいっていう想いがあります。その感動から、僕は服を好きになったので。

 

そんなTシャツが作られていた当時のアメリカ(1950~1960年代)はすごく景気が良くて、だからコスト抜きで、かっこいいものがたくさん作れたっていう背景はあるんですけど。どうにか工夫して、再現したいですね。

 

ーー今回の5色刷りのデザインですが、ポップなキャラクターの大きなプリントが古着っぽくてとても可愛いですね。

 

アメリカの各大学には、熊とか、ワニとか、鳥とか、それぞれのマスコットがいるんですけど、そのマスコットたちがそれぞれの大学の頭文字に手をかけるっていう、伝統のデザインがあるんですね。今回はそれをモチーフに、熊が「DARGO」の頭文字「D」にもたれているデザインを刷りました。熊は、熊本なので。わかりやすく。

 

イメージは「DARGO UNIVERSITY」のユニフォームみたいな(笑)。

 

ーー5色を刷るのは大変だったんじゃないですか?

 

うーん……まあArt Human Festa2018は寝ずに出店しましたかね(笑)。

 

ーーそれでもちょっとずつ確実に49色を目指すと。

 

そうですね。完成するころにはオッサンになってると思うんですけど、そこまで行きたいです。

 

「ファッションで気分を浄化する」自分が“アガる”瞬間は気づけば全部服だった

 

 

 

 

ーーオープンしたお店をこれからどんな風にしていきたいのか、イメージがあれば教えてください。

 

気軽に寄れる、でも他にはないものがある、そんな唯一無二の店にしたいですね。そういう場を通して、「ファッションで気分を浄化する体験」をしてもらえたら最高だと思っています。

 

僕は、古着と古着屋に強く影響を受けて育ったんですけど、はじめて古着屋に足を運んだのは高校生の時。それまではダサかったんで自信が全然なくて、口数も少ないタイプだったと思います。

 

それが古着屋に通い始めてから、当時の自分から見るとオシャレでちょっと近寄りがたい店員のお兄さんといい感じに会話して、お洒落な着こなしを教えてもらうことができた! みたいな小さな達成感の積み重ねで、日に日に自信が持てるようになっていったんですよね。

 

それで「服が持つパワーはすごい」って感じた時に、そういう経験を他の人にもしてもらいたいと思い、アパレル業界に進むことを決め、色々あって今というか。

 

だから買い物を楽しみに店に来て下さるお客さんたちには、僕が過去古着屋に通う度に感じていたように、「DARGO」に通う中でどんどん気分をアゲてもらえたら、すごく嬉しいですね。

 

 

 

 

 

ーー実店舗で服の販売をしていくって、なかなか経営が難しい時代で、大変なこともたくさんあると思うんですが、これからもTシャツ作りを続けていくんですよね。

 

もちろんです。まず僕はまだ何もなし得ていないし、憧れのブランドを越えてもいませんから。まだまだ道は長いですね。

 

 

 

 

ーー憧れのブランド?

 

「HEADGOONIE」というブランドがあるんですが、そこの商品のクオリティや、ブランドがファンに与える衝撃度が他のブランドとケタ違いなんです。ブログを読んだり商品を見ただけで、旅をしているような、映画を見ているような、不思議な感覚になるんですよね。

 

他にも、前に友達がビンテージのウールシャツをゲットしたって見せてくれたことがあったんですが、そのシャツが凄くて。熊本に昔あった「一番館」っていう名前のテーラー店オリジナルの、50年代に販売されたウールシャツだったんですけど、オープンカラーのブラック地にオレンジの線が入った、めちゃくちゃ恰好良いデザインで。今はもう手を抜かれている仕立ての部分も、綺麗に仕上げられていました。

 

シャツの背中側に「熊本一番館」っていうタグがつけられていたんですが、そのデザインがアメリカのタグっぽくて……そのシャツに込められた想いと、自分がやってることを勝手に重ねちゃいました。

 

僕は今Tシャツを通して「アメリカンカジュアル」を発信したいと思ってるんですけど、そのシャツを作った人もそういうことが好きだったのかな? 当時発信するために試行錯誤していたうちの1枚がこれなのかな? …なんかものすごい先人がいたんだなって思うと、すごい心洗われた気持ちになって泣けてきて、丁寧に仕上げられたそのシャツ見て、また泣いて。

 

その時僕が作ったTシャツが50~70年後に残っていた時に、同じことをやってる人の手にたまたまそのシャツが渡るようなことがあったら、その人は感動して泣くかな?って想像したら、まだ泣かないなって。だからそのレベルに達するまでは止められない。

 

そういう半端ない服たちを見ていると、服の奥深さを感じて、ちょっと大変なことがあったって、やっぱり服と生きていくことをやめられないんですよね。

 

ーー成松さんにとって大切なものが服にはたくさん詰まっているんですね。

 

アイデンティティですね。誰かを喜ばせるのも服だし、自分がアガるのも服だし、歴史とかローカルとかを表現するのも服だし、もう僕にとって表現の全て=服なんですよね。

 

 

 

 

ストーリーの詰まった服ー古着ーの魅力に魅せられた成松さんが、これから50年、70年とご自身のストーリーと共に紡いでいく49色刷りの色鮮やかなT-shirtsとはどのようなものなのでしょうか。成松さんの提案する“アメリカンカジュアル”が日本のローカル・熊本から全国へ、世界へと届く。そんな歴史を目撃することを楽しみにしながら、引き続き成松さんの活動を追っていきたいと思います。

 

 

次のアートヒューマンは映像クリエイターとして活動する尾方剛さんです。更新を楽しみにお待ちください。

 

 

それではまたー!