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ARTICLEアーティストのリアルを届ける特集記事

熊本古着回想 Vol.1

取材・文・写真 / Daiki Narimatsu

 

 

 

この度、アートヒューマンWEBサイト内にて「熊本古着回想」という連載をスタートすることになりましたナリマツと申します。宜しくお願い致します。

 

普段は熊本でインディーズT-shirtブランド【DARGO】として製作を行っていまして、アメカジ好きな方に向けて、シルクスクリーンを使った手刷りのT-shirtを専用スタジオにて一枚ずつプリントしています。

 

 

なぜ機械優勢・大量生産がメインになっているこのご時世に、そんな手間なことをわざわざやっているのかというと、”青春時代に憧れたアメリカの古着のTシャツを自分なりに再現したいから”なんです。おそらくこの記事は様々な年齢の方がご覧になっていると思います。

 

まず、なぜ、僕みたいな人間が、今更 ”こ ん な こ と” を書くことになったのかお話させてください。

 

 

 

古着ブームを駆け抜けた青春時代

 

僕は1990年2月生まれ(平成2年)でして、思春期真っただの中学時代、世間はバリバリの古着ブーム。

 

細かく言えば古着ブームも周期が存在しており、そして何世代かに分かれるのですが、90年代から~2004年くらいまでの古着ブームは全身古着でスタイリングするわけではなく、同時期に流行っていた裏原ブーム*1のブランドと上手~くミックスさせるのが流行っていました。

 

*1 1990年代初頭から裏原宿エリアに図らずも集まったインディーズブランドたち。のちに日本を代表するストリートブランドとなる世代

 

ブランドで言えばBATHING APE, STUSSY, REVOLVER, NEIGHBORHOOD, BOUNTY HUNTERとか。古着と裏原ブランドをミックスして編集していたGET ON!とかめちゃくちゃ読んでいましたし、勉強していました。

 

 

熊本の方なら懐かしいNO!もかじりつくように読んでいましたね。地域性があったので、ショップ情報や熊本ストリートのスナップなどはNO!でリサーチしていました。

 

「no!(エヌオー)」とは「Naked opinion」=「ありのままの意見」という意味の略語であり、一般人のありのままの意見を掲載する雑誌。ファッションスナップや美少女記念館など時代を写す多様なコンテンツが若い世代から絶大な支持を集めていた。

 

 

なにわともあれ、全身古着でスタイリングされている方も雑誌のスナップではたまに見かけていましたが、個人的には新旧アイテムのミックススタイルに衝撃を受けまして…。

 

しかも地味そうなメンズからヤンキーっぽいお兄さんまでかならず古着をコーディネートに1点差し込んでくる感じ。とてもオーラのあるスタイルの方が熊本にもたくさん溢れていて、同時に子供だった自分は憧れの目で諸先輩方を見ていました。

 

TVで言えばキムタク、草薙剛、あとは当時の若手俳優もこぞってアメカジ古着やヴィンテージを着用していましたし、アメリカンカジュアルっていう普遍的なジャンルなのにどうしてこうも朱に交わらず、人としてそれぞれの個性が際立っているのか、僕にとってアメカジ古着というアイテムがとても魅力に感じることが出来た瞬間でした。

そりゃ、もうね、めちゃくちゃカッコよかったんです。

着こなし方もギラついてないし、その辺に売ってありそうなのに、でもそれ以上にカッコよく見えるアメカジというスタイリングの魅力ですね。素晴らしいです。

 

 

インターネット・SNSが発達し、雑誌やお店の役割に変化が起きた2005年

 

まぁ、ただ、インターネットやSNSが2005年以降から徐々に発達したことで、限られた情報を発信していたファッション関連の誌面は同時期に続々と休刊・廃刊が続き、窮地に追いやられることに。お客側も情報の獲得が出来なくなり、聞けば当時の古着屋さんへの来店も減り、ブームは沈静化し、売り上げの規模、シェア、熱狂的なファン数の衰退も考慮すると古着ブームも所謂”ブーム”と呼べなくなり、推測として平成の古着ブーム全盛期は2005年までだったと思います。その後は熊本でも沢山の古着屋さんを見なくなりました。

 

特にInstagram等が活発に使用されるようになった2012年以降では、人々の興味はもっと分散します。まず、承認欲求を具現化したSNSにて、いいね!を率先してもらえるのは「食」の写真です。もちろん全ユーザーが人間なので、全員にとって有益な情報である「食」の写真が共感を得やすいのは周知の事実。

 

 

「服」は二の次、三の次でしょうか

 

 

そして「服」にたどり着いても、「アメカジ古着」はもっと後手に。まずはユニクロやGUの「ファストファッション」の情報がたどり着きやすいですよね。ユーザー数も多く、ここでも規模のメリットが発揮されるため大手の情報を発信すればするほど有利。

 

とはいえインスタを見ていると、一見、古着もなかなかの情報ボリュームで混じっているように見ますが、SNSを見るときは超高速で上下にスクロールするので、目に留まる商品はとにかく色彩豊かで目立つアイテムじゃないと難しいですよね。

 

そしてお店側も作業時間を割いてUPしたからには売上に繋げないといけないから、安く売れる(買える)古着をUPする。そうすると自然に色彩豊かで、安く売れるアイテムの提案をせざるを得なくなり、SNS上のデータには90年代の古着が多く露出される傾向に。

 

あの際どくダサいやつ。

今ではそのジャンルのアイテムも錯覚資産(イメージ)が増えているため、世間一般的には“ダサカッコいい”という雰囲気で伝わるかと思います。

 

いわゆる90s古着も、編集する際に名称をBACK TO THE 90s とカテゴライズすれば、もっと聞こえはよくなる。代表的なブランドで言えばOLD GAP、NAUTICA、POLOとか。

 

この年代の古着の特徴はまだ玉数もアメリカなどに残っているので仕入れることが出来るし、映えるし、安く売れるからSNSで販売を見込める。だから売る。僕より年齢の若い、若年層ユーザーの皆様もSNSが無い時代の大きな古着ブームを体験していないため、先入観がなく、ヴィンテージ界隈でよくみられる“タグ買い”や年代を気にしたりもしない。

 

ユーザーの傾向、SNSショッピング、魅せ方

 

買い手と売り手の需要と供給がすべてマッチングし、古着という一つのカテゴリーの中で好循環を生み出している唯一のジャンルが90s古着だと推測しています。

 

 

今回の企画において重要なことはここから

 

簡単ではありますが、現在の古着ビジネスの攻略法として上記のような流れが主流であることを前提として述べました。そして逆にひとつの疑問も僕の中に生まれました。

 

それは「なぜ」「今でも」「SNSで映えない」「クラシックで懐古的な古着やヴィンテージ」を扱うお店が存在するのか…ということです。

 

儲けたいなら、大きな流れに乗れば勝つのが勝負の鉄則。お店の端から端までそうすればいいのに、芯を曲げず、自分たちが信じた「クラシックで懐古的な古着」を愚直に伝え続けるショップがまだ熊本には残っています。

 

ブレずに伝え続ける姿勢は本当にカッコいいです。

そしてそういうお店に勇気をもって一足踏み込めば、SNSがなかった”あの頃”の古着屋の雰囲気を感じることができ、それはお客としてもきっと特別な時間になってくれると信じています。

 

 

平成の最中、自然発生的に生まれた熊本・並木坂の古着ブーム

SNSが無い時代、街の若者の視線の的は「古着」でした。

週末も古着屋に行けば常にどこも満員御礼。

レジで並ぶ、人が多すぎて入店さえできないなんて当たり前。

 

 

店員のお兄さんが謝り、お客の僕らも『2時間後くらいにまた来ます!!(汗)』なんて”約束”して必ずまた足を運んでいたあの日々。そんなひとつの時代を体感した自分だからこそ、次の世代の橋渡しに少しでもなれば。

 

そういった想いにご縁が重なり、これからネット記事にてアーカイブ形式で僕個人のアメカジ古着を紹介させていただくこととなりました。今後はSNSが発達する前に購入したお気に入りの古着やヴィンテージをご紹介していきたいと思います。

 

また、最近購入したアイテムもご紹介させていただきますが、その際は必ずお店で直接選んだモノをご紹介させていただきます。購入判断としてSNSで映えていたからとかそんなチープな理由ではなく、お店で待ち構えていたウェアが本来持っている雰囲気をピックし、情報が発達していなかった ”あの頃” と同じ条件で購入(もち自腹)したいと思います。(後日お店さんのSNSで紹介があった場合はやむ負えませんのでご了承ください!!)

 

 

ストーリーのあるファッションの楽しさを改めて伝えたい

 

で、僕は熊本のヴィンテージキングというわけではありませんし、この企画を通してそういったインフルエンサーとしてのポジションを確立したいわけではありません。

 

あくまでも古着好きとしての側面に今の職業で培った専門的な知識を掛け合わせて、ご覧いただく読者さまにアメカジ古着が放つデザイン性、ユーモア、そしてファッションの楽しさをあらためてお伝えしていきたいと思います。。

 

年代で言えば90年代以前、50年代~80年代のアメリカ古着が中心となります。先ほど説明した通り、僕は地元のヴィンテージキングとして名をはせたいわけではないので、高額ヴィンテージはあまり披露しないと思います。(逆に今SNSで見放題だし)

 

見向きもされないけど自分自身がカッコいいと思ったウェアだけを購入するクセがあるので、掲載するアイテムはネクストヴィンテージや珍品レギュラーがどうしても多くなります。

 

 

というわけで、スマホの画面をスクロールするスピードでは絶対に見落してしまうアイテムを、この【熊本古着回想】にてご紹介させていただきます。直接お店に足を運ぶことでしか視れない光景もまだまだ残っています。僕だって、30歳になっても自分の足で稼ぎたい。

 

厚かましさと暑苦しさ全開ですが、一・古着好き目線でバシバシお伝えしてまいります。

どうぞ宜しくお願い致します!!

 

 

 

 

 

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