北川麦彦

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AHP:
では、インタビューをはじめます。宜しくお願いします。

 

北川:
行動力がすごいですね。「行きたい」って言って、実際に「来る」人は少ないですから。わざわざ小国までどうも(笑) 宜しくお願いします。

 

AHP:
それにしても小国ってめっちゃ涼しいですね。坂本善三美術館も外観だけ見ましたが、古民家風の建物で良い意味で美術館に見えない素敵な場所でした。有名なんですか?

 

北川:
観光客も多いです。坂本善三さんは小国町出身で、町が功績を称えてあの美術館を設立したそうです。

 

AHP:
そうなんでね。すごいです。
では、次に北川さんのことについて教えてください。今はどんな活動をされていますか?

 

北川:
「北川麦彦」の作家名で、陶器を製作しています。僕は主に植物由来の自然の灰を融合させ、作品をつくっています。

 

AHP:
陶器っていうと「お皿」や「湯呑」ですか?

 

北川:
そうですね。ただ、生活食器の提案だけでは面白くないので、僕は生活に+αをできるような楽しめるものをつくっています。

 

AHP:
生活に+α?例えばどういったものでしょうか。

 

北川:
はい。例えばランプシェードや花瓶を陶器と同じ素材で作っています。僕は製作の際に遊び心を大事にしていて、先日は“はにわ”をつくりました。

 

AHP:
はにわですか。陶芸家というと無言で轆轤を回す姿を思い浮かべますが…。さすが平成生まれというか、発想に遊び心がありますね(笑)
さて、そんな北川さんですが、陶芸家になるまでの過去について是非教えてください。

 

北川:
経歴で言うと、まずは地元の南小国中学校を卒業して、高校は熊本北高校に通いました。その時は3年間下宿でしたよ。高校卒業後は大分県の芸術文化短大に進学しましたが、家庭の事情で中退しました。で、時間もあったし若かったので京都へ移り、京都内でカフェや雑貨店を経営する某会社の雑貨アパレル部門の店頭スタッフとして2年間勤務しました。
その後、退職して小国町に戻り、陶芸家としてのキャリアをスタートさせたという感じですね。
中学の頃は英語が得意だったし、英語科があったので北高へ進学しました。短大も、大分芸術短大は小国から近いし、学習期間も通常の大学のような4年ではなく2年間学べば卒業だったので選びました。

 

AHP:
なるほど。短大進学までは順調のように思えますが、それを中退して京都へ行き、そして小国に戻られた。高校卒業後は特に色々とあったようですが、そのへんはいかがですか?

 

北川:
短大を中退した理由は家庭の事情なので仕方がなかったですね。でも卒業製作はしっかり提出しましたよ(笑)
で、そのあとに京都へ行ったのも、単純に行きたかったからです。就職先も父親の知り合いのお店だったので、縁あってそちらでお仕事させて頂けるようになりました。

 

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AHP:
僕が初めてお会いした時に北川さんはすでに陶芸家でしたから、販売員という一面が想像つきません。僕も販売員の経験がありますが、実際に働いてみてどうでしたか?

 

北川:
そうですね…。とにかく数字をめっちゃ求められました。大事なんですけどね、数字。慣れると別に気になりませんが、社会人に成りたての頃だったので、数字に対する考え方を勉強するのが大変でしたね。というかおかねを稼ぐことは大事なことなんですけど、「好き」ではないってことに働いて気付いたんです。でも、親父の紹介でしたし、そんな短期間で地元には戻れないので2年間は勤めました。その間、ショップスタッフをしながら並行して自分でものづくりをやっていて、山登りも好きだったので、実家に戻って窯を継ごうと思いました。それで就職して2年後に退職、実家に戻って家を継ぐといった流れですね。

 

AHP:
そうなんですね。ところで、たとえご実家が窯をされていたとしても、僕は子供が「後を継ぐ」って絶対じゃないと思うんです。たとえば僕なら両親が何か自営業をしていたとてしても、僕が「好き」じゃないなら継がないだろうな~って思います(笑)
北川さんはどうして退職後に陶芸家のキャリアを選ばれたのでしょうか?

 

北川:
う~ん、僕はもちろん物心が付いたときから父が窯で製作している後ろ姿を見ていたことも関係しますが、とにかく自分の中で「火の力」は凄いな~って思ったことが一番ですかね。

 

AHP:
火の力?

 

北川:
はい。最初は親父の姿を見よう見まねでやっていただけなんですけど、土や灰から練り上げたものが窯から出てくる凄さというか。精神性の話になってしまうんですけど、窯の中の温度は1200℃もあるんですよね。人間が到底生きることのできない温度の中から、自分の想いを表現した作品が出てくるってすごく素敵だなと思って。そういう意味で自分の中で「火の力」は凄いものになりましたし、それに魅了されてからは創作意欲も湧き、どんどん製作にのめり込むようになりました。まるで研究のような感覚ですね。

 

AHP:
神秘的ですね。では、実際に始めてみてどうでしたか?製作について、もう少しリアルな意見を聞かせてください。

 

北川:
はい。元々、小さい頃から親父の後ろ姿は見ていましたが、自分でやってみて「作る」だけではダメだと感じました。やっぱり、魅せて、販売につなげないと手に取ってもらえないなと。この過程の難しさはありますが、今はそれも楽しめるようになっています。つくることで繋がれる人もいるし、出会いは大事にしたいですね。サラリーマンだと会社内だけの付き合いが多くなるじゃないですか?そういう意味で、陶芸家という職業は自分らしい仕事だと思えます。
あとはつくる趣向が変わってきましたね。陶芸を始めた最初の頃はピシッて決まりのある都会的なデザインを好んでいた。でも最近は火の力・土の力を信じてつくるようになりました。ちょっと形が変わっていたとしても、それは火や土の力のおかげ。釉薬づくりもそうですが、結果よりも製作プロセスを信じるようになり、そういった作品を作ることが多いですね。プロセスあっての作品だと思います。

 

AHP:
なるほど。その話の中で大変なことやギャップはありましたか?

 

北川:
そうですね。製作プロセスを重んじるようになったんですけど…、仕事として数字的な結果もある程度は求めなければならないことですかね。やはりある程度の利益がないと、次の製作へのパワーも弱まります。 あとは製作物へのリアルな評価というか、理想と現実の話ですね。例えば、陶器がいつも焦げすぎると色が濃くなるので、火の温度を通常より低い温度で止めて焼くと、色が鮮やかになると思って実践したときがありました。結果は、釉薬が溶けきれず、表面に小さな凹凸が表れたんです。いやぁ~、実は個人的にはアリなんですけど、一般的には受け入れにくい少数派の作品なんだと思いましたね。 でもこの失敗から生まれたアイデアを活かして、次はランプシェードをつくりました!失敗した時と同じシチュエーションで製作したので、確かに表面はガタガタです。ただ、それは口につけなければ良いので、陶器=食器という概念を一度捨てて、インテリアとしての提案をしてみました。

 

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AHP:
それイイですね!おしゃれです。

 

北川:
ありがとうございます。表面がつるつるな陶器製ランプシェードより、ザラザラして表情があった方が素敵だなと思って。
ほかにもスマートフォン用のスピーカースタンドを製作したんですよ。ただ、自分がbluetoothスピーカーを購入したらそっちは全く使わなくなりましたね(笑) やっぱり音は勝てません(笑)
でも、見た目の洒落っ気はありますよ。要はユーザーがどういう使い方をしたいかですね。僕は陶器=食器にとどまらない提案をしていきたいです。

 

AHP:
ところで、「陶器」と「磁器」ってどう違うんですか?

 

北川:
はい。まず、「磁器」は石の粉を混ぜて焼きます。いわゆるガラスですね。一方で満願寺窯では「陶器」の製作を行っており、こちらは粘土状の土の粉、灰を混ぜて焼きます。僕は陶器製作の中でも植物由来の灰を混ぜており、「きゅうり」や「みかん」「メロン」の自然釉を混ぜて作品をつくっています。

 

AHP:
なるほど。満願寺焼きについても詳しく知りたいのが本音ですが、僕みたいな平成世代の若い子って、そもそも陶磁器そのものを詳しく知っている子が少ないと思うんです。なのでここはあえて陶磁器の違いや魅力についてもっと深く質問してもいいですか?
満願寺窯については、是非11月のアートヒューマンフェスタ2016にご来場頂いて、北川さんから直接お聞きした方がグッとくると思うので…(笑)
まず「磁器」についてですが、これは九州での有名どころだと佐賀の有田焼や唐津焼。最近だと長崎の波佐見焼きなんかはアパレルブランドとタイアップしたり有名ですが、このイメージで合ってますか?

 

北川:
はい。あとはアメリカのファイヤーキングなんかも磁器の一種ですね。いわゆるガラス製なので表面がフラットで綺麗な面をしています。吸水性も低いので、乾きやすいですよ。

 

AHP:
一方で陶器はいかがですか?

 

北川:
陶器は灰でつくるので土の風合いが残った焼き物です。見た目はボッテリして、磁器製品よりは厚みがあるものが多いですね。吸水性もあるので、洗っても乾きにくいんですよね。ただ、厚みがあり熱に強いので、お湯を注いだ湯呑を持っても熱くなりにくいのが特徴です。

 

AHP:
なるほど。じゃあ、焼酎お湯割りなんかを陶器製の湯呑で呑むのが最高ですね。

 

北川:
ですです。でも正直言うと僕は陶器の機能性に関しては、磁器や鉄器とくらべた時、むしろ劣っている部分もあると思います。表面も1点1点違いますし、クセがある。自宅にある食器も磁器が多いご家庭が多いと思います。だけど陶器は職人が轆轤(ろくろ)を回し、その手で、想いを持ってひとつずつ丁寧につくられています。その表面のクセは「手の温かみ」「火の力」「土の力」を持って生まれたものなんです。人の温もりを持った作品を通して、皆さんの生活に温かみを添えることができます。

 

AHP:
う~ん、深い。確かに磁器と陶器の違いは説明通り、特に見た目なんて全然違いますよね。でもなんだろう、だんだん陶器が好きになってきました!

 

北川:
ありがとうございます。磁器もイイところはありますけど、陶器はもっといいですよ(笑)
あと、陶器は食器としての使い方が一番好まれるかもしれませんが、僕は植物が好きなのでこれからはインテリア什器・小物としての提案もしていきたいです。何度も言いますが「火の力」「土の力」って凄いんですよね。1200℃という生物が生き残れない窯、言い換えれば人の手が届かない場所でエネルギーを加えて出て来た作品が、人間の生活に癒しと実用製を与えられるって本当に凄い。大袈裟かもしれませんが、土の神や火の神がいるように思えてきました。

 

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AHP:
ちなみに製作はどういう流れですか?

 

北川:
はい。まず、土を形成して乾燥させます。その後、800℃で素焼きします。素焼き後、さらに釉薬を付けて本焼き。ここが1200℃の工程ですね。そして本焼きで色が決まり、作品の良し悪しが決まります。 これは余談ですが、ウチって冬は薪ストーブを焚くんです。「いけるかなぁ~」と思って、たまたま本焼きを薪ストーブに入れてみたら、窯よりも器の色が深まったんです。陶器ならではの白い乾乳部分が濃くなって、全体的にコントラストが増しました。失敗するときもあるんですけど、僕は遊び心を忘れずにこういうチャレンジを継続していきたいです。

 

AHP:
いいですね。北川さんの製作スタイルもだんだん伝わってきたところで、お次は陶芸家としてのキャリアについてお伺いしたいと思います。陶芸家として5年目に突入しましたが、心境はいかがですか?

 

北川:
心境?う~ん。師匠は父親なんですけど、子供の頃はすごく厳しかったですが、陶芸の仕事に関しては最初だけ教えてもらって、あとは自由にさせてもらっています。干渉もないですし、時代も父の頃とは違う。それに作品のスタイルも違うので好きにやらせてもらっています。心境としては特に年数を意識することなく、やっています。新しいことにチャレンジはしたいですが、心持ちはいつも通りですよ。

 

AHP:
わかりました。ところで陶芸家として製作から販売までご自身でされていますが、作品の値付けはどうされていますか?

 

北川:
値付けですが、通常はあらかじめ設定した販売価格に当てはめて決定しています。マグカップ・湯呑は平均3000~4000円前後、お皿は平均2000円~5000円前後です。中には1~2万円の価格帯もありますが、これは通常表現できない色の作品が完成した時に希少性が高いと判断したら設定します。
陶器は気温・湿度、そして火の温度や薪の具合とのバランスがとても関係するので、中にはそういった偶然から生まれる希少な作品も生まれますし、それも陶器の楽しみのひとつですね。

 

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AHP:
ありがとうございます。では、次は単刀直入に質問させて頂きます。売れますか?

 

北川:
ストレートですね(笑)
まぁ~これが面白くて、やっぱり価格帯によって購買層が存在しているんですよ。安いから売れるわけではないです。でも、一番人気があるのはお皿や湯呑などの使い勝手が一番いい作品たちです。小さくて実用性の高い陶器は人気ですね。

 

AHP:
贈り物などでもイイですよね。僕、北川さんの作品を頂けたらめっちゃ喜ぶと思います。

 

北川:
ですね~。お皿や湯呑は贈り物の需要も高い作品です。

 

AHP:
では、そうやって気持ちを込めてつくった作品はどうやってお客様に手に取ってもらうんでしょうか?

 

北川:
えぇーと、引き出物や贈り物でご本人から直接注文が来る場合もありますが、販売方法としては展示会が一番多いですね。毎年4月と11月は父と一緒に東京で展示会を開催します。あとはギャラリーでの展示・販売会やイベント会場での出展や即売会がメインの販売方法です。出展することでヒトの繋がりもできるので、自分から外に出ることは大切にしています。

 

AHP:
自分から営業はかけないんですか?

 

北川:
営業…。営業って難しいですよね(笑) そもそも求められていない状況にお願いして、こっちの要望を受け入れてもらうわけじゃないですか。いや、実は一度だけ営業をしたことがあるんですよ。でも無理言ってイベントをさせて頂いている分、100%の表現がめっちゃしづらいんです。知り合いであればお互いにイベントでの表現方法について交渉しやすいんですけど、まったく知らない方に営業して許可を得ても気を使って表現しづらかったです。もちろん相手の方も経営者なので仕方が無い部分でもありますが、「やり方」としては自分にあまりフィットしていなかったですね。せっかくイベントやるなら、自分の世界観を100%の力で表現したいです。

 

AHP:
ありがとうございます。そんな北川さんですが、今後はどのような活動をしていきたいですか?次のステップや目標を教えてください。

 

北川:
ヨーロッパに行ってみたいですね。海外が好きだし、日本の陶器文化は本当に魅力あるものだと思います。次は海外で作品を広めたいです。あとは新しい技術の習得を目指してしるんですけど、「キンツギ」ってご存知ですか?

 

AHP:
すみません、分からないですね。キンツギとは…?

 

北川:
キンツギって“金を継ぐ”って書いて「金継」と読むんです。日本の修理文化の象徴で、割れた皿を金で継ぐ技法のことです。

 

AHP:
それヤバいですね(笑) めっちゃ贅沢じゃないですか!

 

北川:
そうなんです。ヨーロッパから見ても『日本の金継はクレイジーだ!』って評価を得ているんですよ。これは絶対に身につけて、自分のレベルアップにつなげたいですね。

 

AHP:
北川さんって独特のゆるい姿勢がマイペースなように見えるんですけど、そのペースが速く、そして強いので、実際にお話しするとパワーをもらったような感覚になりましたよ。これからも北川さんらしい製作活動を応援していきたいです。

 

北川:
ありがとうございます。

 

AHP:
それでは最後の質問です。若い子の間で「やりたいんですよね~」って周りに言うけど、言うだけで止まる。好きなコトがあるにも関わらず、いざ行動に移せない子って沢山いると思います。それって何か一つのきっかけがあれば簡単にできると思うんですよね。そんな「まだチャレンジできていない人たち」にむけて、北川さんから一言頂けますか?

 

北川:
以前読んだ本の中で強く印象に残っているフレーズがありまして、それでもいいですか?でも、僕も今でも助けられているフレーズです。それは「できないと思う気持ちだけが、実現を不可能にする。一歩踏み出してしまえば、あとは上手く流れる。」です。本当にその通りで、僕はそう信じてやっとるけん、皆さんもとりあえず一歩踏み出してみましょう。

 

AHP:
いい言葉ですね!この度は貴重なお時間にてご対応頂きありがとうございました!

 

北川:
いえ、こちらこそわざわざ小国までありがとうございます!イベントも楽しみにしています!

 

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