市原亨祐

AHP:

今の活動状況を教えてください。

 

市原:

今は、スーツの販売をしている会社で働いていて、その中で採寸を取ってサンプルなどを着てもらって、データを工場に送ってスーツを作ってもらう業務をしています。個人としては、人に売るものを作っているわけではなく、自分でデザインを考えてパターンを起こして試作品を作ったりしています。他にも、デニムやいろんなパンツなどの補正、リメイクすることも行っています。

 

AHP:

スーツを作ろうと思ったきっかけやこれまでの経歴を教えてください。

 

市原:

まず、小さい頃からですが、自分の父がスーツで仕事に行く姿を見てかっこいいと思ってたんですよね。「どこで買ったの?」と聞くと、「仕立て屋さん」と言っていたので、そこで仕立て屋さんという存在と仕事に興味を持ちました。働く年になって、ふと友人と「洋服作りたい」なんて話をしていたらその友人がすごくスーツが好きで、その彼に「普通に洋服を作るより、スーツとか作ってみたらどう?」って言われて。

その友人は映画も好きだったので、面白い映画を教えてもらったんですけど、「山猫」って1960年台の古い映画があって、その中に登場する人達は、その当時のモーニングコートやタキシードを着ていて、「こういうのが作れるようになりたい」って思いました。

その後、本格的に洋服を作ることを目指します。

熊本にある服飾の学校に入ったんですが、入った年の7月に「三年間婦人服の勉強をしなさい。スーツの技術はその後です。」って言われたんですけど、スーツと婦人服ってジャンルが全然違うじゃないですか。今思うと、教えてくれる人がいなかったんじゃないかなと思うんですけど。

さすがに三年間も婦人服の勉強をしていくのは遠回りと思ったので、学校を辞めて、さっきも登場したスーツ好きな友人にお店を紹介してもらいました。そのお店で、「まずシャツを作ってきて」と言われて、数枚シャツを作って持って行ったら雇ってもらえることになったんです。そこで働きながらその先生にいろいろ教えて貰っていたら、「そろそろスーツを作ってみようか」と言われてそこから本格的にスーツを作り始めましたね。

しかし、その教えてくれていた先生が亡くなったんです。先生が亡くなって行く宛がなくなってしまったんですけど、先生の奥さんが、東京にあるテーラーを教える学校を紹介してもらって上京することになります。

そこで1年間勉強したんですけど、1年じゃ作り方なんて到底覚えれなかったんです。そして、先生の奥さんに「覚えることができませんでした。」って相談したら、「スーツを作りたい人が集まる貸しアトリエのような場所がある」と教えてもらって、東京の蒲田にある小さいアトリエを紹介してもらい、そこに仕事をしながら2年間ぐらい通いましたね。

しかし、そこを借りて作業するのももちろんお金がかかりますし、布代や生活費などでだんだん生活の経済面で厳しくなってきました。基礎的なところは東京で学んでたから、次は現場でいろいろ学んで行きたいと思って、今までの活動で業界にも知り合いが少しずづ増えていたので、いろいろ縁があって今の会社に入社しました。

 

AHP:

これからどういうスーツを作りたいですか?

 

市原:

「そのスーツかっこいいね!」と言われるんじゃなくて「今日素敵だね!」と言われるスーツを作っていきたいですね。今、若い格闘家の人達が派手でギラギラしたスーツを着てたりするんですけど、そういうものじゃなくって、例えばイタリア人のスーツとか結構ヨレヨレで着てるんですよね。でも雰囲気というか見ててすごくかっこいいんですよ。 でもそれが何でかっこよく見えるのかはわかんなくて、うまく言葉に出来ないんですけど、それを理解できるようになるのが課題でもあり、今後の方向性にもなるのかなと思っています。

技術的な面で言うなら、作ってる側の主張はあまり出さずに、お客さんの要望に重視して答えれるスーツを作っていきたいですね。

 

AHP:

スーツを作っていて大変なことはありますか?

 

市原:

大変というか、難しい事はありますね。

ミシンで縫うことよりも指先でする作業が多くって、針に糸を通して仕立てることが多いので、数をこなして行くしか無いんです。パンツのお尻の部分とかは、既製品みたいにミシンですると縫い目が固くなってしまって着ている時の着心地が悪くなるので、手縫いをして優しい作りにするんですよ。あとは、体型に合わせすぎると形が辺になってしまうとかですね。そういうのって作るだけじゃわからなくて、見ることも重要で、全体像を見て形を決めることが意外と大変です。

 

AHP:

今のスーツ業界についてどう思いますか?

 

市原:

工場も減ってきているし、クールビズも導入したり、私服で通勤できる企業も増えているので、スーツの需要と供給は減ってきています。スーツのイメージが「仕事着」とかになっていて、そうなってくると確実に着る機会が減ってくるじゃないですか。昔は地域によっては年初めには誂えたスーツを着て初詣とかそういう地域文化とかあるところもあったんですけどね、それもだんだん無くなってきていて。

スーツ業界がオーダーでも既製品でもニーズが下がってきているので、おしゃれ着として、スーツをオシャレに着る写真やコーディネートなどをSNSに写真を上げていって、身近に感じてもらうとかで若者にスーツに興味を持ってもらえるといいんですけどね。

東京のおじさんとか、Tシャツにスラックスとか着てて、面白い組み合わせとかしるんですけど、若い人はそういう着方あまりしていないのが現状です。

 

AHP:

今後について教えてください。

 

市原:

スーツに興味を持ってもらうのはもちろんですけど、スーツの選び方、買い方、見方、いろんな知識を持ってもらうといいですね。それによってセンスがある人って、ハイブランドが作っているようなスーツを通常のオーダーの価格で作れたりするので。でもやっぱりスーツに興味を持ってもらわないことには始まらないんですけどね。全てはそこかもしれません。

 

今27歳なんですけど、30までにお店を持ちたいと思っています。スーツだけではなくて、ヘアーワックスや香水なども用意して、「このスーツだったら、このアクセが良い」とか、スーツを中心としたその人の身の回りのコーディネートを出来たら良いなと考えています。 やっぱり人と人とのつながりが大事だと思っていて、例えば美容室だと技術がいいからお店に行くというより、その人に会いたくて行くみたいな所あると思うんです。だからお客さんにも「僕に会いたい」と思って来てくれる人を増やしたいですね。 あとはやっぱり、若い人がスーツを着ていく場所を作りたいと思います。外国では、ドレスコードがあるし着る機会が多いけど、日本にはあまり無いしそういう場所が無いので、ワクワクするような形で増やしていけたら良いですね。

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