arthumanKyushu Cultural Information

 

 

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AHP:
活動を含めた自己紹介をお願いします。

 

成松:
熊本でDARGOというTシャツブランドを運営しています。 デザインからプリントまでを熊本市内の専用のスタジオで一貫して制作をし、販売は基本的にオンラインストアを中心にやっていて、下南部にあるスタジオでも購入は可能です。最近は意識して屋外のイベントにも積極的に出展しているので、そちらでもお買い求めいただくことが出来ます。熊本でDARGOというTシャツブランドを運営しています。

 

AHP:
次に、DARGOのコンセプトを教えてください。

 

成松:
「STANDARD & CORE(スタンダードアンドコア)」をテーマに掲げています。この言葉は造語なんですけど、「スタンダード」という言葉はみなさんも馴染みのある簡単な言葉だと思いますが、これには「標準的なもの」という意味が込められています。

 

コア」という言葉は「モノの中心部分にあるもの」という意味なんですね。僕はこの言葉を言い換えると「なくてはならないもの」という意味だと思っています。パソコンにもコアがあるし、車だったらエンジンだし、料理だったら旨味。

 

話が少し逸れますが、Tシャツって僕らが生まれたときからあるじゃないですか。すごく身近な物なんだけど、この世の中からTシャツが消えたらどうなるのかって考えた時に、素っ裸では歩けないし、やっぱり必要性はとても大きい。そういった意味で、身近だけどTシャツを始め、洋服というのは重要な役割を持ったモノだと思っているので、だからこそこだわりを込めてやっていこうと思って、僕の中でのTシャツのコアは製作側の「こだわり」なんじゃないかなと。

 

何でも良いならヨレヨレの肌着でいいわけですし。そうじゃないからこそ、洋服としてのT-shirtが存在する。そういう意味で「定番のモノにこだわりを込める」という気持ちをDARGOの哲学とし、「standard & core(スタンダードアンドコア)」をコンセプトに制作を進めています。

 

そしてこういったモノづくりを熊本でやっていく上で、諸先輩たちが築いてきた熊本の歴史の中で変なことはできませんから。「とてもすごいことを熊本でやっていく」という気持ちを「だごすごい」「だごやびゃー」という熊本地方の言葉「だご」から文字って、『DARGO』というブランド名をつけました。これは、中途半端なことはしないという約束の言葉でもあります。

 

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AHP:
あって当たり前のものだからこそ、とことんこだわるという感じですね。その想いで制作・販売をしている中でやりがいや喜びを感じることはどんなことですか?

 

成松:
ウチは他のメーカーとは違い、小売店への卸売りを中心にやっていなくて、お客様との直接販売をメインにやっています。その中でオンラインストア・スタジオ双方にお客様が直接足を運んで買いに来てくださることが嬉しいですね。自分がつくったモノを自分で提案しているので、とてもやりがいを感じます。

 

今でこそスタジオとして「ジョンブルアンティーク」の店内を間借りさせていただいていてショールーム兼工房を持たせてもらってるんですけど、最初は一緒に活動していたデザイナーの家の四畳半の部屋でコツコツとプリントをやっていました。何もない部屋だったんでしたが、そこからここまでやってきて本当に日頃からサポートしてくださる皆さんのおかげだと実感しています。
この間も熊本市内でイベントを開催した際に大分の日田からわざわざ足を運んでくださったお客様もいて、ウチみたいな小さなTシャツブランドのために時間をかけて足を運んでもらえたことが本当に嬉しかったです。それがエネルギーになっていますし、次の制作に向けてちゃんとやっていこうという想いに繋がっていますね。

AHP:
卸売りはあまり行っていないということですが、なにか理由はあるんですか?

 

成松:

香港のヴィンテージショップ(DAYCHILD STORE)のみに卸しているんですけど、基本的にはあまり展開していません。

 

理由は、卸だと卸先店舗の利益分を販売価格に載せないといけないので、販売価格が高くなっちゃうんですよね。良いもの作って高く売るのは誰でもできると思うんですけど、今の時代は地に足ついた値段で提供することが大事だと思っています。
卸売りが出来れば収入源が増えるので、ブランド運営に関してはメリットはありますが、出来れば直接お客様とお話する中で手に取っていただくことにこだわっています。
あとは、数年前までスタッフとして実店舗に勤務していたので、しっかりと説明して販売をしてくれる人、信頼できる販売員と会うまでは卸はあまりしたくないという気持ちが強いです。「低価格」や「流行の雰囲気」を使って、「手に取りやすい雰囲気」を出すのは大事ですが、それに甘んじて自動販売機のように洋服を提供することにすごく疑問を感じているので。
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AHP:
やはり直接接客することを大事にされてるんですね。そもそも、なんで洋服屋をしようと思ったんですか?

 

成松:
元々、料理人になりたかったんです。高校生の時には全国チェーンの飲食店でアルバイトをしていて、高校卒業後は料理の専門学校に行くことも決めてたんですけど、その飲食店が閉店してしまい、全員解雇になってしまったんです。そのとき、あれだけ慕ってた店長も突然いなくなり、行き先がわからなくなっちゃって。そこで感じたのが「このまま料理人になったら同じ目にあうのかもしれない!」という想いでした。

 

でも、そもそも悪いのはオーナーなんですよね。その時の店長も朝10時から夜1時まで休憩なしで働いたりと、あんなに頑張っていたのにお店は閉店してしまうし。オーナーはアルバイトの従業員に対して「君らは全然関係ないよ」って言うんですけど、「俺達も一生懸命働いてたのにそんなセリフ言うなよ!」って子供ながらに思ったんです。関係無いわけないんですから。その際、「言われた通りに一生懸命働いているのに、他人に振り回された挙句、報われない姿を見たくない」ってすごく感傷的になりました。だって悲しいじゃないですか。自分の人生なのに。

 

そこからオーナーになりたいと思ったんですよね。だから大学は経営学部に進学することを決意して、併行して私生活ではバイト代を全部洋服に使ってたりと学生らしい過ごし方をしていました。そこで『自分は洋服が好きだな』と思って、得意なことだったら勉強も興味を持ってできるし、継続もできると思い、そこから何となく洋服屋になりたいと思ったのがきっかけですね。
そして大学三年生の時、並木坂のセレクトショップ「ORANGE COUNTY」でアルバイトとして勤務し、大学卒業後は同じ会社で社員として採用していただき、郊外店の店長まで任せてもらうことができました。その後、退職してDARGOを始めるという流れですね。

AHP:
今まで販売員として働いていて、DARGOを立ち上げてからは販売員兼製作者にもなったわけですが、DARGOの商品の制作はどうやって作られているんですか?

 

成松:
アメカジや古着が好きなので、その雰囲気に基づきながら、そういったイメージが伝わるようなデザインを考案して、デザイナーに指示し、そのデザインをシルクスクリーン版としてつくり、自分のスタジオで手刷りプリントを施すという流れです。

 

基本的に「Levi’sのジーンズとVANSのスニーカーにいかに合うか」をテーマとして作っています。ベーシックで男女問わず着やすいデザインが多いかなと思います。そして新品の状態だけカッコいいというだけでなく、長い期間で愛着を持って着れるモノを目指してデザインしています。

 

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成松氏がアメリカ買付時に撮った一枚

 

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AHP:
たしかにシンプルなデザインが多い印象ですね。そのデザインはどうやって生みだされているんですか?

 

成松:
毎回テーマは自分の中にありますが、勝手な僕の解釈なので押し付けがましいので表には出さないんですけど、社会の流れだったり身の回りの雰囲気を感じながら「そこは違うよ!そこはこうでしょ!」といった感情をデザインとして表現しています。これは言葉にするのが難しいですね。(笑)

 

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決して「コレ売れるんじゃね?」という感じではデザインしません。どうせつくるなら無いものを作りたいですし、その中でもあえて ”ちょっとだけ田舎っぽい” というか、極端に洗練されすぎていないものを作りたいという気持ちはあります。「アメリカに憧れている熊本の少年がデザインしたT-shirt」みたいなイメージでしょうか。

AHP:
そういう設定があったんですね!面白いです!成松さんにとって洋服の面白い部分ってどんなところですか?

 

成松:
純粋にオシャレをしたらテンションって上がるじゃないですか。例えば週5~6で毎日必死に働いて、その稼いだお金で休日に良いモノを買って、出かけた際に友人に「それ、カッコいいね」って言われるとテンション上がりますし。

あとは、自分がお洒落をすることで自分の周りにいる人や一緒にいる人が喜んでくれると思います。ダサいとなんとも思わないし、むしろ一緒に居たくない人もたくさんいると思います。そう思われるとやっぱり損しているし、ダサいよりカッコいい人の方が絶対イイと思います。

人として、自分の可能性を引き上げてくれるのがファッションの魅力ではないでしょうか。そこから新しい人との出会いが広がり、コミュニケーションにもなるし。洋服は楽しんで損はないですよ。

 

AHP:
なるほど。成松さんの「カッコいい」の定義ってなんですか?

 

成松:
「カッコよくなりたい!」と思ってカッコいい格好をしてる人は誰でもカッコいいですよね。

 

「こういう格好をしたい!このスタイルが俺のカッコいいだ!」と自己設定して、そこを目指し、そして実現してる人はカッコいいし、一緒に喋っていても楽しいです。
逆に身なりに気を使わない人はもっと自分に関心を持つべきだと思うし、持った方が良いと思います。また、そういう可能性をひっくり返せる販売員に出会えてないのはこちら側の責任という部分もあるかもしれません。
AHP:
販売員としての責任感が強いですね!自分の洋服に興味を持たない人に関して何かアプローチとかしてるんですか?

 

成松:
う~ん…。正直、洋服を買える人は所得にもよります。所得が厳しい人はやっぱりどうしても安い洋服、強いて言えばファストファッションで完結せざるを得ないじゃないですか。今はそっちもクオリティが良いし。

 

でも所得が多いとより良いモノ、高いモノが買える。現実的な話なんですけど実際そうだと思っていて…。本当に生活を切り詰めて、ようやくファストファッションしか買えないという人に「こっちの高いモノを買ったほうが良いよ!」と強引に進めるのはちょっと違うかなと思いますね。

 

だから一概に「洋服に興味を持ってください」とは言えないかもしれません。でも、もし余裕があるのであれば、”安くすることで自然に手に取りやすいモノを並べ、接客を一切しない「生活衣料品店」”のようなお店から飛び出し、”高いけどちゃんとファッションについての会話ができる「洋服屋」”で買い物することを一度おすすめします。

 

人間、一度はイイお店で買ったという経験が自分の中にあっても良いと思いますし。話の中でそういうストーリーを話せる人はカッコいいですよね。

 

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AHP:
今はネットで安く簡単に買えたり販売したりできる時代ですけど、それについてはどう思いますか?

 

成松:
そうですね。10年前に比べるとその環境はかなり発達していて、飽和していると思います。出店している人も多いし、売っちゃいけないレベルの人たちも売り始めていますよね。

売っちゃいけない人というのは、洋服に関しての知識を持ち合わせていなさすぎる人たちです。例えば、カリフォルニアに行ったことない人が「カリフォルニアテイストの洋服ですよ」と謳い、洋服を販売しているのは個人的に疑問に感じています。

 

その中で、やっぱり僕自身もそういう人たちの部類に見られてしまう可能性もあるはずで、時代として様々な憶測と情報が混沌としているような状態ではないでしょうか。

ネットが発達した分、買い物でも一人が選べる選択肢が増えたじゃないですか。それで街に行く回数が減ったという話もよく聞きますし。「ネットの発達がリアルの買い物を壊した」と言っている人とも出会いましたから。

 

これからはそれを踏まえて、買い物としての面白い提案をすべきだと思うんです。ネットで見てもらうにしても、見てもらった人の時間を考えて、発信する側は有意義な内容を多く発信するべきですよね。単純に、どうでもいいことを書いても情報が溢れてしまうだけなので。
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AHP:
ネットも現実世界も含めて、今のアパレル業界についてなにか思うことはありますか?

 

成松:
凄く厳しい業界だと思います。25歳、27歳、30歳とか、節目で辞める人が多いので。

 

お店をやめた人も同じ業界で転職するかと思ったら、全然別の業界に行っちゃったりとか。 手に取ってくれる方(お客様)へ夢を与えなきゃいけないので、そういう意味で提供する側としてすごく覚悟がいる業界で、ストイックにやれる人じゃないと厳しいんじゃないですかね。 モノを使って夢を売る仕事だから、そうじゃないと居座れない業界なのかなと思います。
10年前のアパレル業界に比べて、その環境はインターネットが変化させていると思いますが、その反面でちゃんと生き残ってる人はいますし、その人達は持ち合わせるべき”芯”だったり、突き詰めた考えがあるからお客様から求められるわけで。今はある種、みんなが振るいにかけられてるような感じはしますね。
ですから、日々「なぜ洋服屋があるのか?」「なぜ販売しているのか?」を考えることが大事なのではないでしょうか。

AHP:
やっぱりとことん突き詰めて活動することが大事なんですね。日々いろんな事を考えて活動を行っているということですが、DARGOが目指しているものってありますか?

 

成松:
熊本から日本一のシルクスクリーンT-shirtを作ることです。

日本一の基準はいろいろあると思いますが、それは今回はあえて述べないとして…。

 

現状、シルクスクリーンの版って1枚作るのに4000円~5000円ぐらいするんですよ。 今、日本で販売されているシルクスクリーンTシャツって1色か2色のものが多くて、3~4色も重ねられていたら割りとプリントに手をかけている方なんです。

 

ウェアとして、7~8色を重ねられているTシャツってほとんど存在しない。そのくらいの色の量になると、原版を必要としないインクジェットや転写プリントというデジタルな製法になる。そうじゃなくてもデジタルプリントは多く存在していて、手刷りなんて平成の世では以ての外なんです。

 

それはなぜかというと、1枚のプリントTシャツを製作する際、1版5,000円かかるシルクスクリーンを7枚も8枚もコストをかけて制作するより、1色~2色で制作して枚数売れた方が販売側にメリットがある。極端な話、コストを掛けず、プリントが一切されていない無地Tシャツを販売したほうがお得となるんですよ。無地Tシャツを外人のモデルさんに着させて、写真を綺麗に撮り、「ヌケ感が最高です」なんてパッケージ化して広告として伝えたら沢山売れるかもしれないし、利益も大きいはず。
そのやり方は良しとしても、でもそうなるとメーカー側も無地Tシャツを大量に作り、市場には大量の無地Tシャツが溢れることになりますよね。販売店的には店頭に無地Teeのみだとお客様に選び甲斐が無いから1色~2色でプリントされたTシャツも少しはお店に置いたりするんですけど、するとお店にはそういうレベルのTシャツしか並ばないようになるじゃないですか。つまり実店舗でもオンラインストアでもそういう物が溢れてくると、消費者はそういうものしか見れなくなります。
以前から販売員をしていたときにその兆候はだんだんと見え始めていたんですけど、僕は販売員としてお客様に8色とか9色の豪華にプリントされているTシャツを見せてあげたいという気持ちになるんですけど、そもそもメーカーが作っていないから仕入れることが出来ない。
「つくる必要があるかどうか」という話は別としても、そうなったときに「今後誰が作っていくのか?」と思うようになり、僕も一販売員として主体性を持ってやっていきたいし、じゃあもう仕事を辞めて贅沢に色を重ねたシルクスクリーンT-shirt製作をやっていこうと思いました。この平成の世の中、しかもデジタルに逆行して、手刷りで。そういう想いでDARGOを立ち上げたんですよね。
ただ、すぐ8~9色のシルクスクリーンT-shirtをつくったり、さらに15色以上も色を重ねたT-shirtをつくっても、オーバースペック現象が起きてしまい、良さが上手く伝わらないんですよ。確かに良いモノかもしれないんですけど、どこが良いのかわからない感じになってしまって。
例えば、車の免許を持ってない人に「ポルシェは凄いよ!」って言っても、その車の良さって伝わらないじゃないですか。2015年にDARGOを立ち上げましたが、最初の2年間は「手刷りでプリントする」ということ。そして「プリントの魅力を伝える」というテーマをもってコツコツ活動していたので、これまではあえて版を何枚も重ねてきませんでした。
熊本でT-shirtブランドを立ち上げる上で「お客様と一緒に成長していこう」というイメージを頭の中で描いていて、お陰様でお客様からの期待の声も少しずつ多くなってきたので、今後はそろそろワンランク上のハイエンドモデルも制作しようと考えています。
秋冬シーズンから気合いを入れて良いTシャツをつくると共に、熊本から日本一のシルクスクリーンT-shirtをつくれるように頑張っていきたいと思います。

 

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AHP:
それでは最後に今後の意気込みというか、野望とかあったら教えてください。

 

成松:
東京の知り合いのブランドがひとつのT-shirtに13版、つまり13色重ねたモノを制作していまして…。その後、そのブランドは30版重ねていました(笑)

ちょっと大きな野望ですが、それは越したいと思います!ちなみにエルメスはスカーフで48版重ねて制作していました。それもいつかは越したいと思っています!超えるためには熊本で49版重ねないといけませんね(笑)
でも、洋服を売ってメシを喰える仕事を成り立たせたのは自分じゃないし、この熊本という土地は特にそうなんですが、いろんな先輩達が築いてくれた歴史があり、その道をつくってくれた先輩たちの後ろを歩かせてもらってると思います。そういう文化があるからこそ、今僕はこの仕事を出来ていると思いますし。だから先輩たちにも「良いものを作ってるね」と認めてもらうようなことをしないといけないと思っていて、どうせやるならとことんやりたいですね。
だからDARGO(ダーゴ)なんですよ。
どんな仕事でもみんながダーゴだと思うんですよね!言い換えれば。その道をとことん進んでいて、突きつめて、各々がお客様に貢献しようとしている。中途半端ではいけない。そうやって普段のお仕事を頑張っている人たちが洋服を買ってくれるわけですから、お客様や業界の諸先輩たちを含め、DARGOに目を向けてくれる人すべてに刺激を与える存在でありたいです。
そのためにはこれからもっとたくさんのアイディアとスキルが必要だなと思います。まだまだ半人前ですが、しっかり腕を磨いて、これからもいつも期待を寄せてくれるお客様のために良いモノをつくっていきたいですね。

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